成分と栄養素

エゾウコギの効果とは?有用成分エレウテロサイドやさまざまな栄養を含むエゾウコギの効能を解説!

健康スペシャルティ

公開日 1970/01/01

最終更新日 2025/08/04

エゾウコギは、寒冷なシベリアや中国北東部を中心に分布する薬用植物で、滋養強壮・疲労回復に効果を発揮する生薬として活用されてきました。1970年代にその効能へ注目を集め、オリンピック選手が体調管理に活用したことで有名となったエゾウコギは、エゾウコギ由来の有用成分エレウテロサイドや、ビタミン、ミネラル、多糖類などの豊富な有用成分に関する研究が進み、近年さらにその効果へ関心を集めています。

そんなエゾウコギについて、さまざまな研究で報告されている効果を解説していき、皆さんの健康維持に役立つ情報をお届けします!

 

エゾウコギとは?

 

エゾウコギの基本情報

エゾウコギは、貴重な生薬として知られる高麗人参と同じウコギ科に属する、薬用植物の一種です。エゾウコギは高さ3mほどになる落葉低木で、木の幹に下向きの鋭くとがった刺が密生している特徴を持つことで知られています。

 

エゾウコギは、ロシアや中国北東部、朝鮮半島の寒冷地を中心に分布しており、日本では北海道に自生しています。刺の多い特徴的な幹の様子から、中国では​​​​刺五加(シゴカ)と呼ばれており、医食同源の植物として利用されてきました(1)。アメリカでは別名シベリア人参(Siberian Ginseng)とも呼ばれており、エゾウコギとシベリア人参は同じものを指す言葉です。

 

エゾウコギはその効果から急速に注目を集めた薬用植物で、一時は過剰な採取による絶滅のリスクが懸念されたこともあるほど、重要な植物として知られています。

 

エゾウコギの生薬としての利用

エゾウコギには、医食同源の植物として活用されてきた長い歴史があり、中国北部では千年以上親しまれてきたとされています(2)。エゾウコギは、根に豊富な有用成分を含むことで知られており、根茎を用いた生薬「刺五加」や、根皮を用いた生薬「五加皮」は、​​​​伝統的に活力増進や滋養強壮に活用されてきました。

 

また、エゾウコギに含まれる多様な成分は、私たちが環境の変化に適応するうえで必要となる活力を補給するとともに、健常な精神状態の維持や、免疫力の向上の手助けにもなると考えられてきました。これらの効能から、ロシアを中心にエゾウコギは「適応を促進するもの」という意味を持つアダプトゲンのひとつに数えられ、ストレスに適応した心身の維持の助けとなる植物として活用されてきました(3)

 

エゾウコギが持つアダプトゲンとしての効能の研究に力を入れてきたロシアは、ストレスや疲労への適応能力を高めるエゾウコギの効能をさまざまな場面で活用してきたことが知られており、エゾウコギの優れた働きが世界中に広く知られるきっかけとなっています。

 

エゾウコギが注目を集めたきっかけ

エゾウコギの生薬としての利用には長い歴史がありますが、近代科学による研究で注目を集め始めたのは、1950年代に入ってからのこととされています。

 

1950年代後半、旧ソ連が薬用植物として貴重な高麗人参と同様の効果を持つ植物を求め研究を進めたところ、エゾウコギの効能に注目が集まりました。エゾウコギはそのアダプトゲンとしての効果から、1970年代以降のオリンピックでは活力や集中力を補う栄養ドリンクとして、旧ソ連代表アスリートに活用されました。エゾウコギを摂取した旧ソ連代表アスリートの好成績が目立ったことや、宇宙飛行士が栄養補給に活用したというエピソードも広まったことで、世界中でエゾウコギが有名になったと言われています(4)

 

注目を集めたエゾウコギは、ヨーロッパやアメリカなどさまざまな国々でも研究が進められ、今では世界中で高い人気を誇る健康食品として知られています。

 

エゾウコギにはどんな成分がある?

 

エゾウコギ特有の有用成分エレウテロサイド

エゾウコギには、高麗人参の主要成分であるサポニンをはじめ、さまざまな植物性化合物が含まれています。そのなかでも、エゾウコギが作る特徴的な有用成分はエレウテロサイドと呼ばれており、エレウテロサイドBとエレウテロサイドEの優れた効果が特によく知られています。

 

エレウテロサイドBは、シリンギンとしても知られる植物性化合物で、抗酸化作用、免疫調節作用、抗炎症作用、抗疲労作用など、多くの効能が報告されている物質です。一方、エレウテロサイドEは、リグナンという植物性化合物の一種で、強力な抗炎症作用があるほか、むくみを改善する効能もあることが報告されています(5)

 

これら2つのエレウテロサイドは、エゾウコギが持つ幅広い効果に深く関わる重要な成分として知られており、さまざまな研究でその有用性が報告されています。

 

エゾウコギのさまざまな栄養成分

エゾウコギには、エレウテロサイドだけではなく、フラボノイドやクマリン、リグナンなどのさまざまな植物性化合物も含まれており、エゾウコギの効果に重要な役割を果たしていると考えられています。

 

さらに、エゾウコギには豊富な多糖類やアミノ酸、脂肪酸、ビタミン、ミネラルも含まれており、私たちの活力や免疫力へ効果を発揮すると考えられています(6)

 

エゾウコギの効能

 

豊富な有用成分を含むエゾウコギの効能は幅広く、現在もさまざまな研究が進められています。この記事では、そんなエゾウコギの代表的な効能について、研究報告にふれながら解説していきます!

 

肉体的疲労への効果

エゾウコギはその利用の歴史から、疲労への効果へ特に注目を集めており、研究報告でもその効果が示唆されています。

 

運動による疲労へのエゾウコギの効果を確かめた研究では、健康なボランティアにエゾウコギの抽出物またはプラセボを摂取してもらい、サイクリングによる運動テストの持久力や最大酸素摂取量への影響を比較しました。その結果、エゾウコギを摂取したグループで疲労困憊までの運動時間が有意に長くなったほか、最大酸素摂取量も高かったという結果が報告されており、持久力向上への効果が示唆されています(7)

 

神経保護・精神的疲労への効果

エゾウコギの有用成分エレウテロサイドBやエレウテロサイドEは、炎症を抑える作用がさまざまな研究で報告されており、特に神経の炎症へ効果を発揮することが示唆されています(8)

 

また、エレウテロサイドEはその抗炎症作用により、脳卒中によるダメージから脳細胞を保護することも、ラットを用いた研究で示唆されています(9)

 

さらに、健康な成人を対象とした研究では、エゾウコギを含む混合物を摂取したグループで、認知機能検査のスコアが有意に改善したほか、不安や不確実性などのストレス評価も有意に改善したことが報告されており、エゾウコギが認知機能にも効果を発揮することが示唆されています(10)

 

エゾウコギは、ストレスによる精神的疲労の緩和や睡眠改善にも役立つ可能性が示唆されており、神経や精神面においても幅広い効果を発揮すると考えられています(3)

 

免疫への効果

エゾウコギは、抗酸化作用を示すエレウテロサイドや多糖類などを豊富に含んでおり、さまざまな研究で免疫への効果も示唆されています。

 

たとえば、エゾウコギ由来の多糖類をマウスへ投与したさまざまな研究で、免疫細胞の増加や活性化により免疫機能を向上させた結果や、免疫のバランスを保つうえで重要なサイトカインの調節に効果を発揮した結果が報告されており、エゾウコギが正常な免疫機能の維持に役立つことが示唆されています(6)

 

また、エレウテロサイドEにも免疫機能を調節する効果が示唆されており、エゾウコギはアダプトゲンとして利用されてきた歴史と同様、環境変化に柔軟に対応できる免疫機能の維持に貢献すると考えられています(11)

 

エゾウコギの安全性と摂取のポイント

エゾウコギは長年にわたり医食同源の薬用植物として用いられてきており、一般的に安全性への懸念は大きくありません。

 

実際に、ボランティアへエゾウコギを摂取してもらい、認知機能への効果を調べた研究では、エゾウコギの摂取による副作用は確認されなかったことが報告されています(10)。また、肉体的疲労への効果を調べた研究では、1名が摂取1日目に軽い寝つきにくさを感じたものの、その他のボランティアには副作用は見られず、血液検査の結果でも問題がなかったことが報告されています(7)

 

ただし、エゾウコギは豊富な栄養素を含むため、その研究は今も進められている段階です。そのため、エゾウコギの利用に関するポイントも参考として記載します。

 

妊娠中や授乳中の方は、エゾウコギの使用に関する研究が少なく、安全性が確保できていないため、使用を避けることが勧められています。小児の場合も同様に、エゾウコギの使用に関する研究が少ないため、使用を避けることが勧められています(12)

 

また、エゾウコギなどの医食同源の植物は、豊富な栄養素を含むことから薬剤の働きに影響を与える可能性があるため、他の治療薬を使用している場合は、まず医師に相談してから使用を検討するほうが良いでしょう。これにより、相互作用による副作用を防ぐことができると考えられます。

 

豊富な有用成分を持つエゾウコギは、活力ある健康な生活の維持に貢献することがさまざまな研究で示唆されています。エゾウコギを活用するとともに健康への意識を高めることで、ストレスや環境の変化へ柔軟に対応できる、健康的な生活に繋がることが期待されます。

参考資料:

  1. ​​エゾウコギ Eleutherococcus senticosus Maximowicz (ウコギ科) 公益社団法人日本薬学会

  2. Pharmacognostic Evaluation and HPLC–PDA and HS–SPME/GC–MS Metabolomic Profiling of Eleutherococcus senticosus Fruits

  3. ​​Plant Adaptogens—History and Future Perspectives

  4. Phenolic Profile, Antioxidant, Anti-Enzymatic and Cytotoxic Activity of the Fruits and Roots of Eleutherococcus senticosus (Rupr. et Maxim.) Maxim

  5. Tea saponin additive to extract eleutheroside B and E from Eleutherococcus senticosus by ultrasonic mediation and its application in a semi-pilot scale

  6. Advances in the Extraction, Purification, Structural Characteristics and Biological Activities of Eleutherococcus senticosus Polysaccharides: A Promising Medicinal and Edible Resource With Development Value

  7. ​​The effect of eight weeks of supplementation with Eleutherococcus senticosus on endurance capacity and metabolism in human

  8. Anti-Neuroinflammatory Effects of Adaptogens: A Mini-Review

  9. Eleutheroside E alleviates cerebral ischemia-reperfusion injury in a 5-hydroxytryptamine receptor 2C (Htr2c)-dependent manner in rats

  10. Combined Treatment with Two Water Extracts of Eleutherococcus senticosus Leaf and Rhizome of Drynaria fortunei Enhances Cognitive Function: A Placebo-Controlled, Randomized, Double-Blind Study in Healthy Adults

  11. ​​A review on the immunomodulatory activity of Acanthopanax senticosus and its active components | Chinese Medicine

  12. Siberian Ginseng: A Review of the Literature | Natural Medicine Journal


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