成分と栄養素
フラクトオリゴ糖の健康効果と効果的な摂取方法
健康スペシャルティ
公開日 1970/01/01
最終更新日 2025/12/29
近年、「腸活」や「腸内フローラ」という言葉を耳にする機会が増えています。腸内環境のバランスは健康維持に深く関わっており、便通の改善や免疫力の向上だけでなく、糖尿病や脂質異常症といった生活習慣病の予防にもつながるといわれています。その中でも注目されている成分のひとつが、フラクトオリゴ糖です。フラクトオリゴ糖は自然由来の甘味料で、善玉菌のエサとなることで腸内の環境を整える働きがありがあります。また、毎日の食事に取り入れやすいことも魅力のひとつです。
この記事では、フラクトオリゴ糖の特徴や健康効果、効果的な摂取方法、乳酸菌やビフィズス菌との相乗効果などについて詳しく解説します。
1. フラクトオリゴ糖とは
1-1.フラクトオリゴ糖の定義
フラクトオリゴ糖とは、果糖(フラクトース)が2個以上連なった構造を持つオリゴ糖の一種で、たまねぎ、にんにく、バナナ、ごぼう、はちみつなどの身近な野菜や果物にも含まれています。
砂糖に代わる甘味料として開発された背景があり、自然な甘さを持ちながら、カロリーが低く、健康食品や飲料など幅広い製品に利用されています。(1)(2)
1-2.フラクトオリゴ糖の特徴
フラクトオリゴ糖の最大の特徴は、「難消化性」である点です。胃や小腸の酵素で分解・消化されずに大腸まで届き、乳酸やビフィズス菌といった善玉菌のえさとなり、善玉菌の増殖を助けます。
甘さは砂糖の約30%ほどで、血糖値の上昇が穏やかであり、カロリーも低いため、糖質制限中の方やダイエットの方の砂糖の代替品としてもおすすめです。また、フラクトオリゴ糖はむし歯の原因となる酸をつくりにくいため、むし歯予防の観点からも注目されています。(1)(2)
2.フラクトオリゴ糖と一緒に摂取したいビフィズス菌・乳酸菌
腸内環境を整えるには、フラクトオリゴ糖だけでなく、善玉菌そのものであるビフィズス菌や乳酸菌の摂取も重要です。
乳酸菌は主に小腸で活動し、乳酸をつくり出すことで腸内フローラのバランス維持に貢献します。一方、ビフィズス菌は主に大腸に生息しており、乳酸のみならず、酢酸も生成することで腸内のpHを下げ、悪玉菌の増殖を抑える働きがあります。
これらの善玉菌は、フラクトオリゴ糖をエサとして利用して増殖するため、フラクトオリゴ糖(プレバイオティクス)とビフィズス菌・乳酸菌(プロバイオティクス)を一緒に摂ることで、善玉菌の働きがより活発になります。この組み合わせを「シンバイオティクス」と呼び、腸内環境の改善において理想的な組み合わせとして注目を集めています。
また、特定の菌に偏らず、さまざまな菌をバランスよく摂取することも重要です。複数の善玉菌とオリゴ糖をバランスよく取り入れることで、腸内フローラの安定につながります。(3)(4)(5)(6)(7)
3.フラクトオリゴ糖がもたらす健康効果
3-1.腸内環境の改善
腸内にはさまざまな菌が生息していますが、理想的なバランスは「善玉菌が2割、悪玉菌が1割、残りの7割が日和見菌(中間に位置する菌)」とされています。このバランスが崩れると、便秘や免疫低下などの不調があらわれやすくなります。
フラクトオリゴ糖は、善玉菌の増殖を助け、腸内環境を整える効果があります。その結果、便通の改善や便のにおいの軽減、下痢や便秘の予防にも役立つことが期待されています。
また、善玉菌が活性化すると、短鎖脂肪酸(酢酸・プロピオン酸・酪酸)とよばれる物質がより多くつくられるようになります。これらの物質は、腸管のエネルギー源になったり、腸のバリア機能を高めたりする働きがあることが報告されています。
さらに腸内環境が整うことで、免疫機能の調整、アレルギー反応の緩和、さらには糖尿病や肥満などの生活習慣病のリスク低減にもつながる可能性があります。(1)(8)
3-2.血糖値の上昇をゆるやかにする
一般的な糖質は唾液や小腸の消化酵素の影響で分解され体内に吸収されるのに対し、フラクトオリゴ糖は分解されずに大腸まで到達するため、糖の吸収が抑えられ、血糖値の上昇はおだやかになります。
また、善玉菌の働きによって脂質代謝にも良い影響を与えると考えられており、コレステロールや中性脂肪の改善にもつながる可能性があります。(1)
3-3.ミネラルの吸収を促進する
短鎖脂肪酸が産生されることによって腸内のpHが低下すると、カルシウムやマグネシウムなどのミネラルが溶けやすくなります。その結果、これらのミネラルがより吸収されやすくなり、骨の健康や成長期の栄養補給にも役立つと考えられています。(1)(9)
4.フラクトオリゴ糖を含む食品と摂取方法
4-1.フラクトオリゴ糖を多く含む食品
フラクトオリゴ糖は、たまねぎやごぼうなどに多く含まれているほか、にんにくやバナナ、はちみつなどにも少量含まれています。
近年では、フラクトオリゴ糖を配合したヨーグルトや飲料、栄養補助食品なども市販されており、このような食品を活用することで、より効率的に摂取することが可能です。(1)
4-2.砂糖の代用品として料理に活用
フラクトオリゴ糖は粉末やシロップ状の形で販売されており、ヨーグルトやスムージーなどに混ぜたり、砂糖の代わりとして料理に使ったりすることで、手軽に腸内環境を整えられます。
熱に対してもある程度の安定性があるため、短時間の加熱であれば成分も壊れにくいという特徴があります。ただし、長時間加熱すると分解される可能性があるため、煮物などに使用する場合は注意が必要です。(1)
5.効果的な摂取量と注意点
5-1.効果的な摂取方法
フラクトオリゴ糖の健康効果をより高めるためには、ビフィズス菌や乳酸菌と一緒に摂取するのがおすすめです。とくに、ヨーグルトなどの発酵食品にはこれらの善玉菌が多く含まれており、フラクトオリゴ糖と組み合わせて摂取することで、腸内で善玉菌がより活発に働き、腸内環境の改善が期待できます。
最近では、フラクトオリゴ糖とビフィズス菌や乳酸菌をバランスよく配合したサプリメントも販売されており、食事だけでは摂取が難しい場合の補助食品として便利です。サプリメントや食品に含まれるフラクトオリゴ糖を食生活に上手に取り入れ、毎日の習慣として継続することが大切です。
5-2.1日の摂取推奨量
腸内フローラの改善効果を得るには、1日あたり1g以上のフラクトオリゴ糖の摂取が必要とされています。また、便通の改善を目的とする場合は、1日あたり3~5gの摂取が望ましいとされています。
フラクトオリゴ糖の摂取量に関する明確な基準は設けられていませんが、厚生労働省の特定保健用食品の基準では、1日の摂取目安量として3~8gが推奨されています。この範囲を目安に、無理のない範囲で取り入れていくとよいでしょう。(1)(10)
5-3.過剰摂取による影響など
フラクトオリゴ糖は安全性の高い成分とされていますが、過剰に摂取すると一時的な下痢が生じることがあり、注意が必要です。腸内細菌のバランスが急激に変化することで、一次的におなかがゆるくなることがあるため、はじめて摂取する場合や摂取量を増やす場合には、少量からはじめることをおすすめします。
フラクトオリゴ糖の下痢を生じさせない最大摂取量(最大無作用量)は、成人男性で体重1kgあたり0.3g、成人女性では0.4gと報告されています。たとえば、体重60kgの成人女性であれば、最大無作用量の目安は24g程度となりますが、通常の食生活でこの量を超えることはほとんどありません。(1)(10)
6.まとめ
フラクトオリゴ糖は、腸内の善玉菌であるビフィズス菌や乳酸菌の増殖を助け、腸内環境を整える効果が期待される成分です。便通の改善だけでなく、ミネラルの吸収を促したり、血糖値や脂質のコントロールにも良い影響があるとされています。
フラクトオリゴ糖の健康効果を得るためには、継続的に摂取することが重要です。野菜や果物などをはじめ、サプリメントなども活用することで、日々の生活に無理なく取り入れることができます。
また、フラクトオリゴ糖は単体での摂取でも効果があるとされていますが、ビフィズス菌や乳酸菌と一緒に摂ることで、より高い腸内環境の改善効果が期待できます。このように、善玉菌とそのエサを組み合わせて摂る「シンバイオティクス」の考え方が注目されています。
健康的な毎日を送るためにも、フラクトオリゴ糖を上手に生活に取り入れ、腸内環境のバランスを意識した食生活を心がけるていきましょう。
参考資料:
1.独立行政法人 農畜産業振興機構 プレバイオティクスとフラクトオリゴ糖 ~シュガーリプレイスメントから免疫改善まで~
2.独立行政法人 農畜産業振興機構 砂糖以外の甘味料について
3.一般財団法人 日本予防医学協会 年度末!腸内細菌も決算!
4.公益財団法人日本ビフィズス菌センター 腸内フローラと食品・乳製品
5.公益財団法人日本ビフィズス菌センター 乳酸菌の機能性~ヨーグルト・乳酸菌飲料でおいしく健康!~
6.公益財団法人 腸内細菌学会 ビフィズス菌と乳酸菌の違いを教えてください。
7.一般社団法人全国発酵乳乳酸菌飲料協会 発酵乳乳酸菌飲料公正取引協議会
9.腸内細菌学雑誌16: 21-26, 2002 フラクトオリゴ糖摂取により促進された腸管からのミネラル吸収が骨に及ぼす影響