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プロテオグリカンとは?プロテオグリカンの特徴や機能をまとめて解説!
健康スペシャルティ
公開日 1970/01/01
最終更新日 2025/12/29
タンパク質に多くの糖鎖が結合した構造を持つプロテオグリカンは、コラーゲンやヒアルロン酸と並ぶ、軟骨と皮膚の主要成分として知られています。プロテオグリカンは高い保水力を持つことが特徴的で、軟骨のクッション性を生み出し、衝撃から関節を守る機能を果たすことから、高齢化により膝関節のトラブルを抱える人が非常に多い近年、高い関心を集めています。また、サケの鼻軟骨から効率的に抽出する方法が確立されたプロテオグリカンは、産業利用と研究の両方で注目を浴びており、細胞増殖を促す働きや免疫を調節して炎症を抑える働きなど、幅広い活性を持つことが研究で示唆されています。
この記事では、そんなプロテオグリカンの特徴や、注目される理由、効果に関する研究報告などにふれながら、プロテオグリカンとはどのようなものなのかを解説していきます!
プロテオグリカンとは
プロテオグリカンの基本情報
プロテオグリカンは、タンパク質と糖が結合してできる複合糖質という物質の総称で、私たちの体内では軟骨や皮膚の結合組織に豊富に含まれています。
プロテオグリカンは、芯となるタンパク質(コアタンパク質)を中心に、グリコサミノグリカンと呼ばれる巨大な糖鎖が結合した構造を持っています。プロテオグリカンの特徴的な糖鎖であるグリコサミノグリカンは、水分を豊富に蓄えることができる性質を持っており、プロテオグリカンの保水力を支える重要な役割を果たしています。
プロテオグリカンの糖鎖として働くグリコサミノグリカンにはいくつか種類がありますが、最も代表的なものが、関節軟骨での働きでよく知られるコンドロイチン硫酸です。コンドロイチン硫酸は、関節への効果を期待したさまざまな健康食品に活用されている成分ですが、その主な働きはプロテオグリカンを構成することであり、プロテオグリカンは関節保護の中心的な存在と言えます。
プロテオグリカンは、私たちの体内でコラーゲンやヒアルロン酸とともに、細胞と細胞の間を埋めながら成長因子などの情報伝達の場として機能する、細胞外マトリックスという重要な組織を形成しています。関節軟骨でもプロテオグリカンは細胞外マトリックスを形成しており、高い保水性やクッション性などのさまざまな機能を果たしていることが研究で明らかとされ、その重要性から高い関心を集めています(1)。
プロテオグリカンの歴史
プロテオグリカンは、軟骨や皮膚での機能により長年注目されてきた物質ですが、かつては牛の気管軟骨やニワトリの鶏冠などの限られた部位からしか、純度の高い状態で得ることができませんでした。動物の体内にわずかしか存在しないプロテオグリカンは、抽出の難しさも重なり、ウシ鼻軟骨由来のプロテオグリカン試薬が1gあたり1000万円以上の価格で流通するなど、希少な成分として知られていました。
しかし近年、弘前大学を中心とする研究チームにより、サケの鼻軟骨から効率的に抽出する技術が確立され、プロテオグリカンの供給を支える研究が進んだことで、一般の食料品や化粧品への利用が広がっています。弘前大学を中心とした研究で確立された抽出法は、サケの頭部軟骨を酢漬けにして柔らかくする東北地方の郷土料理「氷頭なます」をヒントに開発された画期的なもので、サケ鼻軟骨由来プロテオグリカンはその抽出技術と機能性から注目を浴びています(2)。
プロテオグリカンを抽出する技術の進歩によって、プロテオグリカンの機能に関する研究も大きく発展しており、プロテオグリカンが体内で発揮するさまざまな機能や摂取による効果が解明されてきています。
プロテオグリカンの関節での機能
軟骨の機能とプロテオグリカン
私たちの関節では、軟骨組織が骨の関節面を覆うことで、骨と骨が直接擦れ合わないよう保護しています。また、水分を豊富に含む軟骨組織は、クッションのように衝撃を吸収することで、毎日体重や運動による負荷がかかる関節の消耗を最小限に抑えています。
骨を保護する軟骨組織は、II型コラーゲンが密な網目状のネットワークを形成して、その網目の中にプロテオグリカン(主にアグリカン)が詰まった構造をしています。プロテオグリカンはⅡ型コラーゲンに支えられながら多くの水分を保持することで、その弾力性で荷重による負荷から骨を保護するなど、正常な関節機能の維持に不可欠な働きをしています。
変形性関節症とプロテオグリカン
軟骨組織を形成するプロテオグリカンは、変形性関節症を防ぐうえで重要な存在として知られています。
変形性関節症は、少しずつ軟骨組織が摩耗していくことで炎症が起こり、痛みや可動域の制限を伴うようになる疾患です。変形性関節症の発症にはさまざまな要因がありますが、関節の使用や体重負荷による負担の蓄積や、加齢による軟骨組織の劣化などが主な要因と考えられています。体重によって強い負荷がかかりやすい膝関節で起こる変形性膝関節症は、50歳以上の1000万人が疼痛を経験している疾患とされており、膝関節の可動域制限による悪影響の大きさからも、健康寿命を伸ばすうえでの重要な課題と考えられています(3)。
変形性関節症の進行には、プロテオグリカンの減少とII型コラーゲンネットワークの変性による軟骨組織の分解が深く関わっており、プロテオグリカンの維持は関節の健康を保つうえで非常に重要だと考えられています(4)。
プロテオグリカンの関節への効果
サケ鼻軟骨からの抽出方法が確立されて以降、研究が進められているサケ鼻軟骨由来プロテオグリカンは、関節の健康維持を助ける効果を発揮することが研究で示唆されています。
膝に違和感があるボランティアを対象にした研究では、1日10mgのサケ鼻軟骨由来プロテオグリカンを摂取したグループで、軟骨組織の分解により血中に放出されるII型コラーゲン量が有意に減少したという結果が報告されています(5)。
また、慢性的な炎症反応を引き起こす自己免疫疾患である関節リウマチのマウスモデルを用いた研究では、サケ鼻軟骨由来プロテオグリカンの投与により炎症を促す物質の発現が減少したという結果が報告されており、過剰な炎症を抑える効果を発揮することが示唆されています(6)。
サケ鼻軟骨由来プロテオグリカンは他にも、軟骨細胞の増殖を促す機能などを発揮することも示唆されており、幅広い機能で関節の健康維持に貢献することが期待されています。
プロテオグリカンの皮膚での機能
皮膚を保護するプロテオグリカン
プロテオグリカンは、皮膚での働きもよく知られています。
プロテオグリカンは真皮や表皮でも細胞外マトリックスを構成しており、高い保水力により皮膚の乾燥やシワの形成を防ぎ、弾力のある肌の維持に貢献しています。また、皮膚で働くプロテオグリカンは、紫外線による光老化を防ぐ機能や、細胞への成長因子の伝達を助けてターンオーバーを支える機能を果たすことも示唆されており、幅広い機能で皮膚の健康を支えていると考えられています(7)。
プロテオグリカンの皮膚への効果
プロテオグリカンの摂取は、皮膚のバリア機能維持にも効果を発揮することが研究で示唆されています。
皮膚のバリア機能の維持において重要なプロセスである創傷治癒に関する研究では、サケ鼻軟骨由来プロテオグリカンを投与されたマウスで、創傷部で悪影響を及ぼす細菌数が少なくなり、炎症反応が抑制され、創傷治癒が促進された結果が報告されています(8)。
サケ鼻軟骨由来プロテオグリカンは、免疫機能を調節する働きから皮膚の状態にも良い影響を与えることが示唆されており、皮膚の健康維持への効果が期待されています。
プロテオグリカンを取り入れる方法
食事やサプリメントからの摂取
プロテオグリカンは、魚や牛、鶏の軟骨に含まれており、コラーゲンと合わせて摂取することもできます。しかし、プロテオグリカンは希少な成分であるため、一つひとつの食材に含まれる量は限られています。たとえば、サケ1匹あたりに含まれる鼻軟骨は約35g、プロテオグリカンは約0.2gとされています(9)。
近年は、サケ鼻軟骨由来プロテオグリカンを抽出して配合した健康食品やサプリメントの流通が増えているため、プロテオグリカンを摂取するうえではこれらの製品を活用すると効果的だと考えられます。
適度な運動による体内合成の促進
プロテオグリカンは摂取するだけでなく、体内合成を促すことでも増やすことができます。プロテオグリカンを生成する軟骨細胞の働きは、適度な運動による刺激で促進されることが知られており、軟骨の消耗を気にして運動不足になると、かえってプロテオグリカンの生成が損なわれる可能性があります。そのため、ストレッチやウォーキングなど、無理のない範囲で運動習慣を取り入れることも、体内のプロテオグリカンを維持するうえで効果的です。
まとめ
プロテオグリカンは、高い保水力により軟骨や皮膚の弾力性を支える重要な成分で、近年効率的な抽出法が確立されたことで、健康食品や化粧品への活用も増えてきています。膝関節のサポートとして効率的に取り入れたい場合は、抽出したプロテオグリカンを手軽に摂取することができるサプリメントを活用することもおすすめです。また、プロテオグリカンは適度な運動により増やすことができるため、適度な運動とともにプロテオグリカンを生活へ取り入れると、健康的な関節の維持に役立つと考えられます。
参考資料: