成分と栄養素
GABA(ギャバ)の効果とは?リラックスや睡眠をサポートするGABAの効果を解説!

健康スペシャルティ
公開日 1970/01/01
最終更新日 2025/08/06

現代は多くの方が忙しい生活を送っており、上手く休むことができず辛い思いをする方も多いため、休息に役立つ食品成分の需要は日々高まっています。そのなかで、リラックスや睡眠をサポートする効果が広く知られているGABAは、近年ますます注目を浴びています。私たちの脳で働くGABAは、神経の興奮を抑え、バランスの取れた脳機能を維持するうえで重要な役割を果たしていることが知られていますが、具体的にはどのような効果があるのでしょうか?
この記事では、GABAの効果を中心に解説していき、日々忙しい生活を送る皆さんのリラックスに役立つ情報をお届けします!
GABAとはどんな物質?
GABAの基本情報
GABA(ギャバ)はアミノ酸の一種で、リラックス効果やストレスを緩和する効果、睡眠をサポートする効果でよく知られています。GABAはγ-アミノ酪酸(Gamma-aminobutyric acid)の略称で、タンパク質を構成している20種類のアミノ酸とは異なり、遊離アミノ酸として単体で体内に存在し、私たちの健康を支えるさまざまな役割を担っています。
GABAは、私たちヒトをはじめとする哺乳類では主に脳や脊髄に存在しており、神経伝達物質として重要な働きをしています。GABAはそのリラックス効果や睡眠への効果から、近年さまざまな健康食品に用いられており、機能性表示食品や特定保健用食品などの機能性食品にも活用されている注目の成分です。
GABAの歴史
今ではさまざまな研究により、私たちヒトの脳機能にとって最も重要な神経伝達物質のひとつとしてよく知られているGABAですが、実は発見された当初はあまり注目を浴びない物質でした。
GABAはジャガイモなどから同定された後、1910年代には生体組織にも存在することが知られていましたが、脚光を浴び始めたのはさらに40年ほど経った1950年代になってからとされています。1950年代に哺乳類の脳でGABAが発見されたことで、ヒトの脳の神経活動でもGABAが重要な働きをしていると考えられ始め、その後の研究により、GABAが私たちの中枢神経系で抑制性の働きをすることが明らかとなりました(1)。
今では、抑制性の神経伝達物質の代表格であるGABAと、GABAが直接結合することでさまざまな働きをするGABA受容体は、脳の興奮を制御するうえで重要な働きをしていることが広く知られており、GABAの効果に関する研究も数多く進められています。
GABAの重要性
GABAは、中枢神経系を作る脳と脊髄に高濃度で存在することが知られており、神経の興奮を抑える神経伝達物質として機能することで、リラックスや睡眠を助けるほか、降圧作用や抗糖尿病作用など、さまざまな働きをすることが報告されています(2)。
私たちの脳神経は、神経伝達物質を介して情報をやり取りしており、この神経伝達物質は、アクセルのような役割を担う興奮性のものと、ブレーキのような役割を担う抑制性のものの二つに分けられます。私たちの脳が適切に機能するためには、これらの神経伝達物質の働きにより、神経の興奮と抑制のバランスを維持することが必要となります。
中枢神経系で働く興奮性の神経伝達物質として代表的なものがグルタミン酸、抑制性の神経伝達物質として代表的なものがGABAであり、これらが中枢神経系の興奮と抑制をバランスよく保つことで、思考や睡眠などに関わるさまざまな脳機能が維持されています。
神経の興奮と抑制のバランスが乱れてしまうと、過度な興奮や睡眠障害に繋がるだけではなく、認知機能へ大きな影響を与える神経変性疾患のリスクにも繋がると考えられており、神経の興奮をコントロールするGABAの働きは非常に重要となります(3)。
また、GABAは神経伝達物質としてだけではなく、神経の発達にも重要な働きをすることが知られており、私たちの脳の正常な機能に欠かせないアミノ酸と考えられています(4)。
GABAの効果
GABAは脳機能に重要な働きをしていることがよく知られていますが、具体的にはどのような効果が示唆されているのでしょうか?この記事では、GABAの代表的な効果を、研究報告を解説しながら詳しくご紹介します!
リラックス効果
GABAは中枢神経系で抑制性の神経伝達物質として働くことから、気分を落ち着かせる効果があると考えられており、実際にさまざまな研究でその効果が示唆されています。
GABAのリラックス効果を確かめた研究では、ボランティアにGABAまたはプラセボ1日100mgを2日間摂取してもらい、精神的負荷がかかるテストを受けた際の影響を、リラックスしたときに優勢になることで知られるアルファ波という脳波を測定することで比較しました。その結果、両方のグループでストレスのかかるテストによりアルファ波が減少しましたが、GABAを摂取したグループではアルファ波の減少が抑制されたことが確認されており、GABAがストレスによる悪影響を緩和するうえで効果を発揮することが示唆されています(5)。
睡眠をサポートする効果
GABAの効果のなかでも、睡眠をサポートする効果は、リラックス効果と並んで広く知られる代表的なもののひとつです。
睡眠不足や睡眠の質の低下は、多くの方が悩みを抱える問題で、特に強いストレスによって脳が興奮状態になってしまうと、睡眠のトラブルが起きやすくなると考えられています。そのため、脳の興奮を抑えるGABAは、睡眠の質を改善する効果があると考えられており、実際にさまざまな研究でその効果が示唆されています。
たとえば、睡眠の悩みを抱えるボランティアを対象にした研究では、GABAまたはプラセボ1日100mgを1週間、就寝の30分前に摂取してもらい、「深い眠り」として知られるノンレム睡眠の時間を比較して、睡眠の質への効果を調べました。その結果、GABAを摂取したグループで有意にノンレム睡眠の時間が増加したとともに、アンケートの回答からもボランティア自身が睡眠の改善を実感できていたことが確認されており、GABAが睡眠の質にも効果を発揮することが示唆されています(6)。
また、睡眠への効果が示唆されているさまざまな食品成分を用いて、睡眠障害の要因ごとにそれぞれの成分の効果を検証した研究では、GABAの摂取により睡眠が有意に改善されたという結果に加え、特に寝付きの悪さや睡眠時の姿勢に問題を抱える人にGABAが効果的であったという結果が報告されています(7)。
GABAによる神経の興奮を抑える働きは、睡眠のトラブルを抱える方にも効果的であると考えられています。
血圧低下への効果
GABAは興奮を抑える働きにより、血圧低下にも貢献することが知られています。
最高血圧が130〜180mmHgのボランティアを対象に、GABAの摂取による血圧低下を確かめた研究では、1日80mgのGABAの短期間の摂取により有意な血圧低下が確認されたとともに、8週間にわたる長期間の摂取でもその効果を確認できたことが報告されています(8)。
他の多くの動物実験やヒトを対象とした研究でも、GABAの摂取による血圧低下の効果は示唆されており、GABAは気分のリラックスだけではなく、ストレスによる心血管への悪影響も緩和すると考えられています(9)。
どんな食品がGABAを多く含む?
GABAの含有量は、動物性食品よりも、植物性食品の方がはるかに多いことが知られています。
トマトやジャガイモなどの植物性食品には、1gあたりにミリグラム(mg)レベルのGABAが含まれています。その一方で、肉や魚などの動物性食品では、その約1/1000となるマイクログラム(μg)レベルしかGABAは含まれません。食品としてのGABA含有量を比較すると、トマトやジャガイモなどの植物性食品の方がGABAを多く摂取できます(10)。
また、乳酸菌など一部の微生物は発酵する過程でGABAを生成することも知られており、キムチや漬物にもGABAは豊富に含まれています。発酵によりGABAが生成されることから、近年は乳酸菌を用いて豊富なGABAを生産する研究も進められています(11)。
さらに、近年はGABAを配合したサプリメントも多く流通しており、GABAを意識的に摂取するうえではサプリメントを活用することも効果的です。
GABAの摂取のポイント
GABAの摂取量については、多くの研究で1日計80〜100mgのGABAを摂取することにより効果を確認できているため、研究と同様に1日100mgを目安として、継続的に摂取すると効果的だと考えられます。
GABAを摂取するタイミングについては、一般的に特定のタイミングで摂取する必要はありません。参考としては、睡眠をサポートする効果を期待する場合、GABAを就寝時間の30〜60分前に摂取した研究で睡眠への効果が確認されていることから、就寝の1時間前を目安に摂取すると効果的だと考えられます(6)(7)。
GABAの安全性
GABAの安全性を調べた研究では、GABAを連続して4日間にわたり18,000mgずつ摂取する短期間の研究や、連続して12週間にわたり120mgずつ摂取する長期間の研究のいずれにおいても、重大な有害事象はみられなかったことが報告されています(12)。そのため、一般的な使用においては、GABAの摂取による副作用の危険性は高くないと考えられています。
ただし、病気の治療などにより投薬を受けている方は、薬との相互作用による影響を確認するためにも、医師や薬剤師に相談のうえでGABAを摂取するとより安全です。
参考資料:
-
Neurotransmitters as food supplements: the effects of GABA on brain and behavior
-
Influence of glutamate and GABA transport on brain excitatory/inhibitory balance - PMC
-
An Updated Review on Pharmaceutical Properties of Gamma-Aminobutyric Acid
-
Production of Gamma-Aminobutyric Acid from Lactic Acid Bacteria: A Systematic Review
-
United States Pharmacopeia (USP) Safety Review of Gamma-Aminobutyric Acid (GABA)