成分と栄養素
ビフィズス菌にはどんな効果がある?ビフィズス菌の幅広い効能をまとめて解説!

健康スペシャルティ
公開日 1970/01/01
最終更新日 2025/09/11

近年、「腸活」や「善玉菌」といったワードが注目されるなかで、その中心的な存在として語られているのがビフィズス菌です。ヨーグルトやサプリメントなどさまざまな商品に活用されているビフィズス菌ですが、「体に良い働きをする」といったイメージはある一方、具体的な効果まで知っている方は多くないかもしれません。実はビフィズス菌は、腸内環境だけでなく、免疫機能やメンタルの安定、生活習慣病の予防にまで効果を発揮することが示唆されている、特に優れた善玉菌として知られています。
この記事では、そんなビフィズス菌の幅広い効果について、研究報告をもとにわかりやすく解説していき、ビフィズス菌の活用に役立つ情報をお届けします!
ビフィズス菌の基本情報
ビフィズス菌とは?
ビフィズス菌は腸内にすむ善玉菌の代表格です。
私たちの腸内には約1,000種類の細菌がすみついていますが、ビフィズス菌はそのなかでも、私たちが生まれたときから健康を支える働きをする特別な善玉菌であることが知られています。母から受け継ぐビフィズス菌は、健康な腸内環境の基盤を形成するとともに、腸のバリア機能、正常な免疫機能、代謝機能など、生きるうえで欠かせないさまざまな機能の形成に貢献します(1)。
成長とともに他の腸内細菌が増えることで、腸内環境が安定する成人期にはビフィズス菌の占める割合は少なくなりますが、ビフィズス菌は健康を支える重要な役割を果たし続けてくれます。しかし、ストレスや食生活の乱れはビフィズス菌を減少させてしまうことが知られており、高齢になることでもビフィズス菌は減少してしまう傾向にあります(2)。
その重要性から、近年ビフィズス菌を積極的に取り入れることへの関心は高まっており、さまざまな製品に活用されるようになってきています。
ビフィズス菌の特徴
ビフィズス菌は、短鎖脂肪酸や多糖類など、健康維持に役立つさまざまな物質を作ることができるという特徴を持っています。特に短鎖脂肪酸は、脂質や糖の代謝を調節するほか、腸内環境を酸性に保つことで悪玉菌の増殖を抑える役割も果たしており、ビフィズス菌の幅広い効果に関わる重要な物質であると考えられています(3)。
また、ビフィズス菌は酸素がとても少ない大腸内の環境に適応できるほか、食物繊維をエサにすることもできるという特徴も持っています。大腸内のビフィズス菌の数は、同じ善玉菌の代表格である乳酸菌の100倍以上とされるほど多く、腸内環境へ大きな影響力を持つこともビフィズス菌の特徴として知られています(4)。
ビフィズス菌はさまざまな有用物質を作る働きや、全身に大きな影響力を持つ腸内環境を整える働きにより、消化器系だけでなく、呼吸器系や心血管系、免疫系、神経系にいたるまで、全身の健康を支えることがさまざまな研究から示唆されています。
ビフィズス菌の効果
腸内環境の改善
ビフィズス菌の最も代表的な効果のひとつは、腸内環境を改善する効果です。
私たちの腸内には、善玉菌・悪玉菌・日和見菌の3つのグループが共存しており、そのバランスが健康を大きく左右します。ビフィズス菌は、短鎖脂肪酸の生成などにより悪玉菌の増殖を防ぐことで、腸内の腐敗やガスの発生を抑え、便秘や下痢の予防・改善に効果を発揮します(5)。
また、腸内環境のバランスを整える効果は、全身へ大きな影響を与える腸内細菌全体の働きを良い方向へ導くことにもつながります。ビフィズス菌が減少することによる腸内環境の乱れは、さまざまな疾患につながるとされており、ビフィズス菌は幅広い働きで私たちの健康を支えていると考えられています。
正常な免疫反応の調節
私たちの腸には、全身の免疫細胞の約7割が集まっており、「腸は最大の免疫器官」と呼ばれるほど、免疫機能に対して大きな影響力を持っています。
ビフィズス菌は、免疫細胞の働きやシグナル物質の量を調節し、適切な免疫反応を誘導するとともに過剰な炎症を防ぐという、免疫反応のアクセルとブレーキの両方をコントロールする機能を果たすことが研究で示唆されています(6)。
腸内のビフィズス菌が減少してしまうと、免疫に関わるさまざまな疾患の発症・悪化につながることも研究から示唆されており、正常な免疫系の維持にビフィズス菌は欠かせない存在であると考えられています(7)。
また免疫は、花粉症などのアレルギー反応にも深く関わるため、ビフィズス菌の摂取によるアレルギー症状への効果も注目されています。実際に、生きた状態で腸まで届きやすい特徴を持つことから「プロバイオティクス」としてよく研究されているBifidobacterium longum BB536の摂取により、花粉症の症状が改善した結果や、花粉症の原因となる抗体のレベルが正常化した結果などが報告されています(8)。
さらに、生きたビフィズス菌だけではなく、加熱殺菌されたビフィズス菌の摂取も腸内環境のバランスを整えてアレルギー抑制効果を発揮することが示唆されており、ビフィズス菌は幅広い形で免疫機能の調節に貢献すると考えられています(9)。
メンタルヘルスのサポート
ビフィズス菌は、メンタルヘルスへの効果も注目されています。腸と脳の密接な関係は「脳腸相関」という言葉で知られており、腸内環境の状態が気分やストレス、メンタルの安定にまで影響を及ぼすと考えられています。
うつ病と腸内環境の関連を調べたさまざまな研究から、うつ病患者の腸内細菌の構成は健康な人と比べて、多様性が損なわれるなど腸内環境のバランスが崩れている傾向にあることが知られており、メンタルヘルスにおける腸内環境の重要性が示唆されています(10)。
Bifidobacterium longum NCC3001を健康なボランティアに6週間摂取してもらった研究では、ストレステスト後のストレス状態がプラセボと比べ良好だったことや、不安や抑うつ感情の減少が関連していたことが確認されており、精神的ストレスを緩和する効果を発揮することも示唆されています(11)。また、ビフィズス菌の別の菌株を用いた研究でも同様の結果が報告されており、さまざまなビフィズス菌がメンタルヘルスに貢献すると考えられています(12)。
腸内環境を見直すことで心の不調が改善する可能性があり、腸内環境を整える重要な善玉菌であるビフィズス菌の摂取は、メンタルヘルスに効果を発揮すると期待されています。
脂質や糖の代謝のサポート
ビフィズス菌の働きは、腸や免疫、メンタルだけにとどまらず、生活習慣病の予防にも大きく関与していることが明らかになっています。
ビフィズス菌が生成する短鎖脂肪酸や不飽和脂肪酸などの脂肪酸は、血糖代謝やインスリン感受性を調整して糖の代謝を調節するとともに、悪玉コレステロールを抑える機能を果たすことが多くの研究で示唆されている、心血管の健康において重要な物質です。
実際にさまざまな研究で、ビフィズス菌の摂取によるコレステロール蓄積の抑制や糖代謝の改善、体重減少などの効果が報告されており、ビフィズス菌が代謝調節への効果を通して心血管の健康維持に貢献することが示唆されています(13)。
ビフィズス菌の活用のポイント
プレバイオティクスとの組み合わせがカギ
ビフィズス菌の効果を高めるためには、「プレバイオティクス」と呼ばれる成分との組み合わせが有効的です。
プレバイオティクスは、ビフィズス菌や乳酸菌などの有益な菌だけを選択的にサポートすることができる食品成分の総称で、フラクトオリゴ糖やガラクトオリゴ糖などの難消化性オリゴ糖、イヌリンなどの一部の食物繊維が含まれています。これらの成分は、タマネギやネギなどの野菜からよく摂取できることが知られており、ビフィズス菌を活用するうえでは積極的な摂取が効果的だと考えられます(14)。
また、近年はビフィズス菌とプレバイオティクスを同時に摂取できるサプリメントも流通しているため、これらを活用することも効果的だと考えられます。
プロバイオティクスとしてのビフィズス菌の活用
ビフィズス菌は、適量を摂取することで私たちの健康を増進する生きた微生物「プロバイオティクス」でも代表的な存在として知られています。
生きた状態で腸まで届きやすい特徴を持つビフィズス菌は、炎症反応や高血圧、糖尿病や酸化ストレスなどから身を守る効果を発揮することが多くの研究で示唆されており、プロバイオティクスとしてビフィズス菌を摂取することの重要性は近年注目を浴びています(15)。
加熱殺菌されたビフィズス菌にも注目
プロバイオティクスとしてのビフィズス菌だけではなく、加熱殺菌されたビフィズス菌にも健康をサポートする効果があることが知られています。
殺菌されたビフィズス菌は、殺菌前に生成した有益な物質を含んでおり、腸内環境に働きかけて悪玉菌の増殖を抑えるほか、免疫調節などの効果を発揮することがさまざまな研究から示唆されています(16)。
あらかじめ加熱処理をすることから、食品やサプリメントに活用しやすく、安定した働きを期待できるという利点もあり、近年では加熱殺菌済みのビフィズス菌を配合した商品も多いです。このような商品もビフィズス菌摂取に活用することができます。
ビフィズス菌は全身におよぶさまざまな効果を持つことが示唆されている重要な善玉菌で、生きた状態での活躍を期待する「プロバイオティクス」としての摂取だけでなく、加熱殺菌された状態でも効果を発揮することが示唆されています。ビフィズス菌を含む食品やサプリメントを活用するとともに、ビフィズス菌の働きを促進するプレバイオティクスを意識的に摂取すると、健康を維持するうえで効果的だと考えられます。
参考資料:
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Age-Related Changes in the Composition of Gut Bifidobacterium Species | Current Microbiology
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The Effect of Probiotics on the Production of Short-Chain Fatty Acids by Human Intestinal Microbiome
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Antimicrobial and Immunomodulatory Effects of Bifidobacterium Strains: A Review - PMC
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Bifidobacterium mechanisms of immune modulation and tolerance
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Frontiers | Bifidobacterium: a probiotic for the prevention and treatment of depression
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The therapeutic value of bifidobacteria in cardiovascular disease | npj Biofilms and Microbiomes
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Probiotics, prebiotics and synbiotics- a review | Journal of Food Science and Technology
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Recent Development of Probiotic Bifidobacteria for Treating Human Diseases
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Health Benefits of Heat-Killed (Tyndallized) Probiotics: An Overview