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乳酸菌KT-11とはどんなもの?乳酸菌KT-11の特長と効果を徹底解説!

健康スペシャルティ

公開日 1970/01/01

最終更新日 2025/10/21

近年、健康意識の高まりとともに、腸内環境への関心も高まってきています。腸内環境はおなかの調子だけでなく、全身のさまざまな機能へ大きな影響を与えていることが明らかとされてきており、善玉菌の代表格として長年親しまれてきた乳酸菌も、その幅広い効果により再び注目を浴びています。乳酸菌にはさまざまな種類がありますが、赤ちゃんの腸から単離されたヒト由来の乳酸菌KT-11という菌株も、私たちの健康を支える多くの効果と、その利用のしやすさから注目されています。

この記事では、乳酸菌KT-11とはどのようなものなのか、その基本情報や特徴、期待される効果などを解説していき、乳酸菌KT-11の活用に役立つ情報をまとめてご紹介します!

 

健康を支える腸内環境と乳酸菌

 

腸内環境の重要性

私たちの腸は、食べ物の消化・吸収などを担う消化器官としての働きだけでなく、免疫機能や脳機能など、全身の機能へ深く関わる働きもしていることが明らかとされてきています。腸にすみつく多彩な腸内細菌は、さまざまな物質を産生することで腸に集まる免疫細胞や神経細胞へ働きかけ、全身の機能に大きな影響を与えることから、健康維持の鍵を握る存在として関心を集めています。

 

約1,000種類とも言われる腸内細菌には、大きく分けると善玉菌・悪玉菌・日和見菌という3つのグループが存在しており、これらがバランスを取りながら共存することで、腸内環境を形成しています。善玉菌が減って悪玉菌優勢に偏り、腸内環境のバランスが崩れてしまうと、腸の不調だけではなく、心血管疾患や神経疾患、ガン、免疫​疾患​、呼吸器疾患、糖尿病、腎臓病、肝障害など、さまざまなリスクにつながることが示唆されています(1)

 

善玉菌を増やすことは、有益な菌の働きそのもののメリットだけではなく、悪玉菌を減らすことで腸内環境全体の働きを良い方向へ導くという複合的なメリットにもつながるため、健康意識が高まる近年、さまざまな善玉菌の働きが注目を浴びています。

 

そのなかでも、特に重要な善玉菌として知られるもののひとつが、日本でも長年親しまれてきた乳酸菌です。

 

乳酸菌とは

乳酸菌は、私たちの健康に貢献する善玉菌の代表格として、長年さまざまな食品やサプリメントに活用されてきた身近な菌です。

 

健康へ良い働きをすることはよく知られている乳酸菌ですが、善玉菌の代表格として並ぶビフィズス菌との違いや、その具体的な働きについては、それほど知られていないかもしれません。

 

乳酸菌は、元々「糖を代謝して乳酸を多く作ることのできる菌」の総称として使われてきた言葉で、遺伝子配列を用いた分類技術が発展した現在は、Lactobacillales目に分類される菌を指して使われています(2)。一方でビフィズス菌は、「生理学的に乳酸菌に関連している細菌​」として扱われる、乳酸菌とは全く別の菌であり、それぞれ異なる性質を多く持っています。

 

たとえば、乳酸菌は酸素があっても生育できるものが多く、私たちの体の中では小腸に多くすみついており、牛乳や発酵食品などの食品をはじめ、自然界にも豊富に存在していることが知られています(3)。逆に、酸素が苦手なビフィズス菌は、酸素が少ない大腸内部に偏って生息していることが特徴的です。

 

乳酸菌は、乳酸を作ることで小腸の環境を酸性に保って悪玉菌の増殖を抑えるとともに、小腸に集まる多くの免疫細胞などに働きかけることで、幅広い効果を発揮して健康を支える善玉菌として注目されています。

 

乳酸菌KT-11の特徴と機能

 

乳酸菌KT-11とは

乳酸菌KT-11(Lactobacillus crispatus KT-11)は、赤ちゃんの腸内細菌から分離されたヒト由来乳酸菌のひとつで、高いアレルギー軽減作用を持つ新規乳酸菌の探索により選抜された菌株です(4)

 

乳酸菌KT-11が属するクリスパタス菌は、女性の膣内に多くすみついている、免疫への働きが特長的な菌として知られています。また、クリスパタス菌は乳児の腸内での活躍も注目されています。産道を通る際に母から受け継がれることで、まだ細菌の少ない乳幼児の腸内へ早い段階から定着するクリスパタス菌は、乳幼児の免疫機能の基盤作りに貢献すると考えられています。

 

また、同じ​種に属する菌のなかにも、増殖のもととなった菌でまとめた「菌株」というグループがあり、菌株が異なるとヒトへの効果も異なることが示唆されています(5)

 

乳酸菌KT-11は、免疫機能へ働きかける特長的な機能を持つことや、さまざまな食品に活用しやすい特長を持つことが研究で示唆されている、クリスパタス菌のなかでも高い関心を集める菌株です。

 

免疫を調節する機能

乳酸菌KT-11は、アレルギー反応を引き起こす抗体として知られる免疫グロブリンE(IgE)の産生を抑える働きなど、免疫機能の調節へ効果を発揮することが示唆されている菌株です。

 

私たちが持つ免疫機能は、体内に入ってきた花粉や細菌などの異物に対して抗体を作り、脅威となるものを識別して攻撃することで、さまざまな異物から体を守っています。しかし、花粉症やアトピー性皮膚炎などの多くのアレルギー疾患が該当するI型アレルギーは、IgE抗体が過剰に働くことで引き起こされます。花粉などが繰り返し侵入することでIgE抗体の産生量が一定以上になってしまうと、本来無害な花粉などに対して過剰な攻撃をするようになり、アレルギー症状が引き起こされてしまいます。そのため、適切な免疫機能を保つことや異物の侵入を避けることによって過剰なIgE産生を防ぐことが、アレルギー対策において重要だと考えられています(6)

 

そのなかで乳酸菌KT-11は、アトピー性皮膚炎マウスモデルを用いた研究において、血中IgE濃度を有意に低下させる効果を発揮したことが報告されています。乳酸菌KT-11は、免疫細胞のバランスの乱れを整える働きにより、IgE抗体の産生を抑える効果を発揮することが示唆されており、多様なアレルギー軽減作用を発揮する菌株であると考えられています(4)

また、乳酸菌KT-11はアレルギーの抑制だけでなく、感染を防ぐ免疫機能の向上にも貢献することが示唆されています。細菌やウイルスなどによる感染を防ぐ、粘膜での一次防御において重要な働きをする免疫グロブリンA(IgA)への影響を調べた研究では、乳酸菌KT-11を投与したマウスにおいてIgA産生量が有意に増加したことが報告されています(7)

さらに、インフルエンザウイルスに感染したマウスモデルを用いた研究では、乳酸菌KT-11を投与したマウスにおいて、さまざまなサイトカインの産生が促され、インフルエンザ感染の防御に効果を発揮した結果が報告されています(8)

乳酸菌KT-11は、アレルギー反応に関わるIgEの産生を抑えながら、感染を防ぐうえで重要な働きをするIgAの産生を促すことで、適切な免疫機能の調節に貢献することが示唆されています。

 

死菌状態でも効果を発揮する特長

乳酸菌KT-11は、死菌状態でも効果を発揮するという特長でも注目を浴びている菌株です。

 

善玉菌は、長年生菌状態での働きが注目されてきましたが、近年は加熱処理などにより死菌状態となった善玉菌も高い関心を集めています。加熱処理をされた死菌状態の善玉菌は、生菌状態の間に作り出した有益な物質の働きにより、腸内環境のバランスを整える効果や、免疫調節の効果を発揮することがさまざまな研究で示唆されています(9)

 

また、あらかじめ加熱処理をされている菌は、生菌状態で腸まで届けるための特殊な技術を必要としないため、機能性と安全性を維持しやすく、さまざまな食品に活用できるというメリットもあります。

 

乳酸菌KT-11は、加熱処理をされた状態でIgE量の抑制やIgA量の増加などの効果を発揮したことが報告され、死菌状態で活用できることが示唆されている菌株であるため、さまざまな食品やサプリメントを通して生活に取り入れやすいという特長を持つことからも近年注目されています(4)(7)(8)

 

乳酸菌KT-11の活用のポイントは?

適量を継続して摂取する

乳酸菌は、日頃から私たちの体内で活躍している安全性の高い菌として知られており、ヒト由来の乳酸菌KT-11も同様に安全性が高い菌株だと考えられています。

 

しかし、乳酸菌KT-11を活用するうえでは、短期的な効果を期待して大量に摂取するのではなく、適量を継続して摂取することが重要です。

 

私たちの腸内環境や免疫機能は、多くの細胞や物質によって複雑に制御されているため、一時的に善玉菌の供給を増やしても、その効果は短期的なものとなってしまいます。

 

ヒトを対象として乳酸菌の効果を報告してきた多くの研究は、数週間程度は摂取を継続するようデザインされているため、同様に適量を継続して摂取することが重要だと言えます。

 

バランスの良い食生活を心がける

乳酸菌KT-11などの善玉菌を活用するうえでは、腸内環境に大きな影響を与える食生活のバランスを整えることも重要です。

 

食事内容が腸内環境へ与える影響は非常に大きく、特に動物性タンパク質や脂肪に偏った食生活は、腸内環境の多様性を損ない、腸内毒素を増やしてしまうことが示唆されています(10)。一方、植物性食品は腸内環境を整えるうえで役立つとされており、特に食物繊維を豊富に含む野菜は、善玉菌を選択的にサポートするプレバイオティクスの摂取という観点からも相性が良いと考えられています(11)

 

近年は動物性食品を摂取する機会が増えていますが、植物性食品を意識的に摂取してバランスの良い食生活を送ることは、腸内環境を整えるうえでも重要です。


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