ビフィズス菌入りヨーグルトの健康効果と選び方
健康スペシャルティ
公開日 1970/01/01
最終更新日 2025/12/04
私たちの腸内には約1,000千種類、1,000兆個の細菌が存在し、健康維持には「腸内フローラ」のバランスが重要とされています。とくに、ビフィズス菌は善玉菌として、腸内環境を良好に保つために欠かせない存在ですが、加齢やストレス、食生活などの影響を受けて減少しがちです。そのため、ヨーグルトなどの発酵食品を積極的に摂取し、腸内環境を整えることが推奨されています。
この記事では、ビフィズス菌の働きや、ビフィズス菌を含むヨーグルトの選び方、効果的な摂取方法などについて詳しく解説します。
1. 腸内細菌とは?
1-1.人の腸内には1000種類、1000兆個以上の細菌が存在する
腸内細菌とは、大腸に存在する細菌の総称です。腸内には約1,000種類、1000兆個以上の細菌が存在しており、これらの菌の集合体を「腸内フローラ(腸内細菌叢)」と呼びます。
腸内フローラのパターンは一人ひとり個人差が異なり、3歳までに形成されるといわれています。腸内フローラの形成には、食生活や生活環境、母親の腸内環境が影響を及ぼすと考えられています。(1)(2)
1-2.腸内細菌の種類と役割
腸内細菌は主に、善玉菌、悪玉菌、日和見菌の3つのグループに分類されます。善玉菌は腸内環境を整える働きがありますが、悪玉菌は有害物質を産生して腸内環境を悪化させることがあります。日和見菌は、腸内環境によって善玉菌にも悪玉菌にもなり得る菌です。
腸内フローラの理想的なバランスは、「善玉菌:悪玉菌:日和見菌=2:1:7」とされています。健康な腸内では、善玉菌が悪玉菌よりも優勢になっています。より良い腸内環境を維持するためには、バランスよくさまざまな食物を摂ることで腸内細菌の多様性を保つことが重要です。
腸内フローラのバランスが崩れると、炎症性腸疾患や過敏性腸症候群、大腸がんなどの消化器疾患だけでなく、肥満や糖尿病などの生活習慣病、アレルギー、アトピー、関節リウマチなどにも影響を与える可能性が指摘されています。全身の健康維持のためにも、腸内フローラのバランスを保つことが重要です。(1)(2)(3)(4)
2.ビフィズス菌とは?
2-1.善玉菌の一種であるビフィズス菌
ビフィズス菌とは、腸内に生息する善玉菌の一種です。とくに大腸に多く存在し、腸内フローラのバランスを整える役割を担っています。
WHOは、「適切な量を摂取することで、宿主によい影響を及ぼす生きた微生物」を「プロバイオティクス」として定義しており、ビフィズス菌もそのひとつです。ビフィズス菌のほかには、乳酸菌が代表的なプロバイオティクスとして知られています。(1)
2-2.乳酸菌との違い
ビフィズス菌は、乳酸をつくることから乳酸菌の仲間に分類される場合もありますが、実際には乳酸菌とは異なります。
最大の違いは、乳酸のほかに酢酸も産生するという点です。このため、ビフィズス菌は乳酸菌よりも強力に悪玉菌の増殖を抑えることができると考えられています。
また、ビフィズス菌は酸素があると生存できないという点も乳酸菌と異なる点です。乳酸菌は小腸に多く、ビフィズス菌は主に大腸に生息することが知られています。
乳酸菌とビフィズス菌を一緒に摂取することで、より効果的な腸内環境の改善が期待できます。(5)(6)(7)(8)
2-3.ビフィズス菌の働き
ビフィズス菌は腸内で善玉菌として働き、健康の維持に貢献しています。とくに、悪玉菌の増殖を抑え、腸内環境を整える働きが注目されています。
また、ビフィズス菌は腸の動きを活発にし、排便を促す働きもあります。腸が内容物を移動させる「ぜん動運動」を促進し、便秘の解消が期待できます。
さらに、免疫細胞を活性化させることが報告されており、感染症のリスクを減らす効果も期待できます。腸内には多くの免疫細胞があり、腸内環境が良好であれば、免疫機能が正常に働きます。ビフィズス菌が産生する代謝物は免疫細胞を刺激し、病原菌やウイルスに対する抵抗力を高めることが確認されています。(7)(9)(10)
2-4.ビフィズス菌の不足による体への影響
腸内フローラは、加齢やストレス、食生活の乱れ、運動不足などが原因でバランスが崩れることがあります。特に、ビフィズス菌は年齢とともに減少することが明らかになっています。また、高脂肪・高タンパク中心の食事や食物繊維の不足も、ビフィズス菌の減少を招く可能性があります。
ビフィズス菌が減少すると、腸内で悪玉菌が優勢になり、腸内環境が悪化します。その結果、便秘や下痢、免疫力の低下、アレルギー、肌荒れなどさまざまな問題を引き起こすことがあります。(4)(8)(11)
3.ビフィズス菌入りヨーグルトの健康効果
3-1.腸内環境を整える
ビフィズス菌入りヨーグルトは、腸内環境を整えるのに役立ちます。特に便秘や下痢を改善する整腸作用の効果が期待できるため、便秘がちの人やお腹の調子を整えたい方におすすめです。
3-2.免疫力の向上
腸は「第二の脳」とも呼ばれ、全身の免疫機能と深い関係があります。免疫細胞の約70%が腸に存在し、ビフィズス菌はこれらの免疫細胞を活性化するといわれています。
ビフィズス菌が腸内で優勢になると、病原菌やウイルスの侵入を防ぐバリア機能が強化され、感染症などの予防に役立つ可能性があります。風邪を引きやすい方や免疫力を強化したい方には、ビフィズス菌入りヨーグルトの摂取は効果的な選択肢となります。(12)(13)
3-3.ストレスの軽減
腸内環境を整えることは、ストレスの軽減など精神的な健康にも良い影響を与える可能性があります。これは、腸内で「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンの分泌が促進されるためで、セロトニンの90%以上は腸内細菌由来であるといわれています。セロトニンは、心の安定や睡眠の質の向上にも関係しています。(14)(15)
3-4.美肌効果
腸内環境が改善されると、肌の調子も良くなることが期待できます。腸内の悪玉菌が増えると、有害物質が発生し、それが血流に乗って全身に巡ることで、肌荒れや吹き出物の原因になることがあります。ビフィズス菌が腸内環境を整えることで、こうした肌トラブルを防ぐ効果が期待できます。
4.ビフィズス菌入りヨーグルトの選び方
4-1.ビフィズス菌が入っているか確認する
すべてのヨーグルトにビフィズス菌が含まれているわけではなく、乳酸菌やオリゴ糖を含むタイプなどさまざまな種類があります。購入する際には、成分表示を確認してビフィズス菌の含まれているヨーグルトを選ぶようにしましょう。(1)
4-2.生きたまま腸に届くタイプを選ぶ
ビフィズス菌は胃酸や胆汁の影響を受けやすく、多くの場合は腸に届く前に死滅してしまいます。そのため、「腸まで届く」「耐酸性カプセル加工」などの記載がある製品を選ぶと、より高い効果が期待できます。
4-3.継続しやすいものを選ぶ
ビフィズス菌の健康効果を得るためには、継続的な摂取が重要です。自分の好みに合った味や価格のヨーグルトを選び、無理なく続けられるようにすることが大切です。
5.ビフィズス菌を効果的に摂取する方法
5-1.ヨーグルトは食後に摂取する
ビフィズス菌を含むヨーグルトを摂取する際は、食後に食べるのが理想的です。空腹時に摂取すると、胃酸の影響を強く受け、ビフィズス菌の多くが腸に到達する前に死滅してしまう可能性があります。食後であれば、食べたものが胃酸を中和し、ビフィズス菌の生存率が向上するといわれています。
5-2.食物繊維やオリゴ糖と一緒に摂取する
ビフィズス菌が腸内で増殖するためには、エサとなる成分が必要です。その代表的が食物繊維やオリゴ糖で、これらは「プレバイオティクス」と呼ばれ、腸内の善玉菌を増やす働きがあります。
プレバイオティクスを多く含む食品には、大豆、たまねぎ、ごぼう、ねぎ、にんにく、アスパラガス、バナナ、牛乳、ヨーグルト、はちみつ、甘酒などがあります。(1)(3)
6.ヨーグルト以外の方法でビフィズス菌を増やす
6-1.ヨーグルト以外の選択肢
ビフィズス菌の増殖を助ける食品は、ヨーグルト以外にもあります。たとえば、牛乳に含まれる乳糖には、オリゴ糖ほどの効果はないものの、腸内のビフィズス菌を増やす作用があります。一方で、チーズやバターなどの乳製品に関しては、腸内フローラへの影響がまだ十分に解明されていないため、ビフィズス菌の増殖にどの程度貢献するかは明らかになっていません。(1)
6-2.サプリメントを活用する
ヨーグルトが苦手な方や、毎日摂取するのが難しい方にとっては、サプリメントの利用もおすすめです。サプリメントなら手軽にビフィズス菌を摂取でき、保存の手間も少なく、ライフスタイルに合わせやすいというメリットがあります。
一部のサプリメントには、プレバイオティクス(オリゴ糖や食物繊維など)や乳酸菌が配合されているものもあり、ビフィズス菌と一緒に摂取することで、より効率的に腸内環境を整えることができます。
7.まとめ
ビフィズス菌は、腸内フローラのバランスを整え、健康維持に重要な役割を果たす善玉菌のひとつで、さまざまな健康効果が期待できます。しかし、加齢や食生活の乱れ、ストレスなどの要因によって腸内のビフィズス菌は減少しやすいため、積極的に摂取することが推奨されます。
ビフィズス菌を摂取する方法には、ビフィズス菌入りのヨーグルトがありますが、サプリメントを活用する方法も効果的な方法です。また、プレバイオティクス(オリゴ糖や食物繊維など)や乳酸菌と組み合わせることで、さらに効果を高めることができます。
日々の食生活にビフィズス菌を取り入れ、腸内フローラのバランスを保つことで、健康的な生活を目指しましょう。
参考資料:
1.公益財団法人日本ビフィズス菌センター 腸内フローラと食品・乳製品
2.公益財団法人長寿科学振興財団 腸内細菌叢(腸内フローラ)とは
3.一般財団法人 日本予防医学協会 年度末!腸内細菌も決算!
4.公益社団法人日本生化学会 食と腸内細菌が織りなす腸内代謝環境の構築と健康への影響
5.公益財団法人日本ビフィズス菌センター 乳酸菌の機能性~ヨーグルト・乳酸菌飲料でおいしく健康!~
6.公益財団法人 腸内細菌学会 ビフィズス菌と乳酸菌の違いを教えてください。
7.内閣府広報室 ビフィズス菌生菌末の製造技術及び応用製品の開発
8.一般社団法人全国発酵乳乳酸菌飲料協会 発酵乳乳酸菌飲料公正取引協議会
9.一般社団法人全国発酵乳乳酸菌飲料協会 はつらつファミリー No.61
10.日本食品微生物学会雑誌 Jpn. J. Food Microbiol., 30(1), 1‒14, 2013 プロバイオティクスの免疫調節作用
11.国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター あなたの腸は大丈夫?―いきいき腸内細菌!―
12.Milk Science Vol. 55, No. 4 2007 ビフィズス菌による感染防御と免疫調節作用
13.Kagaku to Seibutsu 57(8): 472-477 (2019) 腸から脳の健康を考える ビフィズス菌A1株による認知機能改善作用
14.公益財団法人日本乳業技術協会 腸内細菌と脳腸相関 ~精神疾患との関連と,ビフィズス菌 Bifidobacterium breve MCC1274 による認知機能改善作用の可能性~