成分と栄養素
プレバイオティクスの力で腸内環境を整え、健康的な毎日を
健康スペシャルティ
公開日 1970/01/01
最終更新日 2025/12/24
腸は食べものの消化や栄養の吸収だけでなく、免疫機能の維持など、私たちの健康にとって非常に重要な働きを担っています。そのため、腸内環境を整えることが、健康維持や病気予防につながるとして注目されています。近年では、善玉菌そのものである「プロバイオティクス」のみならず、それらの善玉菌のエサとなり働きを助ける「プレバイオティクス」にも関心が高まっています。プレバイオティクスは、腸内の善玉菌を増やし、腸内フローラのバランスを改善する働きを持つ食品成分です。また、プレバイオティクスとプロバイオティクスをあわせて摂取する「シンバイオティクス」によって、相乗的な健康効果が期待できるとされています。
この記事では、プレバイオティクスの基本的な情報や健康効果、効果的な摂取方法などについて詳しく解説します。
1. プレバイオティクスとは?
1-1.プレバイオティクスの定義
プレバイオティクスとは、腸内の善玉菌(乳酸菌やビフィズス菌など)のエサとなる食品成分のことです。プロバイオティクスを摂取することで、腸内の善玉菌が増殖し、腸内環境が整うとされています。その結果として、便通の改善や免疫力の向上、生活習慣病の予防など、さまざまな健康効果が期待されています。(1)(2)(3)
1-2.プレバイオティクスとプロバイオティクスの違い
「プロバイオティクス」と「プレバイオティクス」は名前がよく似ていますが、意味は異なります。
プロバイオティクスは乳酸菌やビフィズス菌など、実際に腸まで届く善玉菌そのもののことです。それに対して、プレバイオティクスは、そうした善玉菌を育てるための栄養源となる成分のことです。代表的なものには、食物繊維やオリゴ糖などがあります。
プロバイオティクスとプレバイオティクスを同時に摂取する方法は、「シンバイオティクス」とよばれており、近年では、より効果的に腸内環境を改善できる方法として注目されています。(1)(4)
1-3. 腸内フローラに与える影響
私たちの腸内には「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌(善玉菌でも悪玉菌でもない菌)」の3種類の細菌が存在し、このバランスが健康状態に影響を与えます。
腸内フローラ(腸内細菌の集合体)のバランスが崩れると、有害物質を産生する悪玉菌が増えやすくなり、便秘や下痢、肌荒れ、さらには免疫力低下など、さまざまな不調を引き起こすことがあります。
プレバイオティクスを摂取することで、腸内に有益な善玉菌が増えやすくなり、腸内の環境が整えられます。これにより、悪玉菌の増殖が抑えられ、体全体の健康維持に繋がると考えられています。(5)
2.プレバイオティクスの主な種類と働き
プレバイオティクスとして機能する成分にはさまざまなものがありますが、大きく分けると「水溶性食物繊維」と「糖類」が中心となります。なかでも注目されているのが、イヌリンやフラクトオリゴ糖です。(3)
2-1.イヌリン
イヌリンは水溶性の食物繊維で、ごぼうや玉ねぎ、にんにく、菊芋などに豊富に含まれています。腸に届くと善玉菌のエサとなり、腸内で善玉菌が短鎖脂肪酸を生成するのを助けます。これにより腸内環境が整い、排便状況が改善されます。さらに、イヌリンには血糖値の急激な上昇の抑制、血中コレステロールの改善、炎症性腸疾患や結腸がんに対しても効果があると報告されています。(6)
2-2.フラクトオリゴ糖
フラクトオリゴ糖は、果物や野菜に含まれるオリゴ糖の一種で、特にバナナ、たまねぎ、にんにくなどに多く含まれます。胃酸などで消化されることなく腸まで届き、乳酸菌やビフィズス菌のエサとなってこれらの善玉菌を増やし、便痛の改善や免疫向上に貢献することが期待されています。(1)
3.乳酸菌・ビフィズス菌とプレバイオティクスの相乗効果
3-1.乳酸菌の働き
乳酸菌は、糖を分解して乳酸を作り出す細菌のことで、腸内環境を整える働きがあります。代表的な乳酸菌の種類には、ラクトバチルス属、ラクトコッカス属、エンテロコッカス属などがあります。
乳酸菌は、ヨーグルトやチーズ、乳酸菌飲料、味噌、キムチなどの発酵食品に多く含まれています。人の体では、とくに小腸に多く生息していることが知られています。
乳酸菌が腸内で増殖すると、乳酸がつくられて腸内が酸性になり、腸内環境では悪玉菌の増殖が抑えられます。その結果、腸内環境が整い、便通の改善が期待できます。また、乳酸菌は腸内でビタミンB群や葉酸、ビオチンなどの栄養素を合成し、免疫力の向上にも役立つことが報告されています。(7)
3-2.ビフィズス菌の働き
ビフィズス菌も乳酸菌と同様に、悪玉菌の増殖を抑え、腸内環境を整える働きがあります。ビフィズス菌は、乳酸だけでなく酢酸もつくるという点が大きな特徴です。また、酸素があると生存できない性質を持ち、人の体では主に大腸に生息しています。
ビフィズス菌は、腸の動き(ぜん動運動)を活発にし、排便をスムーズにする効果も期待されています。また、最近の研究では、ビフィズス菌が免疫細胞を活性化させ、感染症リスクを低減する可能性があることが報告されており、健康の維持において欠かせない存在となっています。(8)(9)(10)(11)(12)
3-3.プレバイオティクスが乳酸菌・ビフィズス菌を助ける理由
プレバイオティクスは、乳酸菌やビフィズス菌のエサとなる食品成分で、これらの善玉菌が増殖するのを助ける役割を担います。プレバイオティクスを一緒に摂取することで、腸内の善玉菌がより増えやすくなり、腸内フローラのバランスを良好に保つことができます。
近年の研究では、プレバイオティクスが腸内環境の改善にとどまらず、免疫力向上やコレステロール低下、血圧降下、整腸作用などの効果がもたらされる可能性も報告されています。(1)(2)(13)
4.効果的なプレバイオティクスの摂取方法
4-1.食事から摂取する方法
プレバイオティクスは、日常の食事からも摂取することができます。オリゴ糖が多く含まれる食材には、たまねぎ、にんにく、バナナ、ごぼう、蜂蜜などがあります。また、イヌリンが多く含まれる食材には、ごぼう、玉ねぎ、にんにく、菊芋などがあります。これらの食材を積極的に摂取することで、腸内環境を改善することが期待できます。
4-2.サプリメントの活用とメリット
プレバイオティクスを確実に摂取する方法のひとつとして、サプリメントを活用する方法も効果的です。特に、食事だけでは十分な量を摂取できない場合や、忙しくて食生活が乱れがちな人にとっては手軽で続けやすく、サプリメントは便利な選択肢となります。サプリメントを活用すれば、必要な成分を効率よく摂取することができます。
4-3.プレバイオティクス摂取時の注意点
プレバイオティクスを摂取する際には、過剰摂取に注意することが重要です。
たとえば、フラクトオリゴ糖の場合は一度に大量摂取すると、下痢を引き起こす可能性があります。研究によると、フラクトオリゴ糖の「最大無作用量(体に影響を与えない最大摂取量)」は、体重1kgあたり、成人男性で0.3g、成人女性で0.4gと報告されています。
また、イヌリンについては、米国食品医薬品局(FDA)が、健康な成人の1日の最大摂取量を40gとしています。この量を超えて摂取すると、おなかの張りや軟便などの副作用が生じる可能性があるため、注意が必要です。
サプリメントを使用する場合は、適量を守り、バランスの良い食事とともに摂取することが大切です。(1)(14)(15)
5.まとめ
乳酸菌やビフィズス菌は、腸内環境を整え、私たちの健康を支える大切な存在です。これらの善玉菌を効果的に増やすためには、プレバイオティクスの摂取が重要です。オリゴ糖やイヌリンを含む食品を、意識的に日々の食生活に取り入れるようにしましょう。
また、食事だけでは十分な量をとるのが難しい場合には、サプリメントを活用するのも効果的な方法です。ただし、サプリメントを使用する場合には過剰摂取に注意し、表示されている目安量を守ることが大切です。
腸内環境が整うことで、免疫力向上や消化機能の改善、さらには生活習慣病の予防も期待できます。毎日の食生活を見直して、プレバイオティクスを上手に取り入れていきましょう。
参考資料: