成分と栄養素

ビルベリーとはどんな果物?豊富なアントシアニンによるビルベリーの健康への働きを解説!

健康スペシャルティ

公開日 1970/01/01

最終更新日 2025/04/22

皆さんは「ビルベリー」という果物をご存知でしょうか?ブルーベリーによく似た小さな果実を持つビルベリーには、強力な抗酸化物質として知られるアントシアニンが豊富に含まれており、古くからヨーロッパを中心に活用されてきました。ビルベリーはさまざまな研究で、目をケアする効能や心血管の健康をサポートする効能などが報告されており、近年注目を集めています。

この記事ではそんなビルベリーについて、どのような果物なのかという基本情報から、豊富に含まれるアントシアニンの機能、ビルベリーに関する研究報告など、気になる情報をまとめて解説します!

 

ビルベリーとはどんな果物?

 

ビルベリーの基本情報

 

ビルベリー(学名:Vaccinium myrtillus L.)は、7mmほどのブルーベリーよりひと回り小さな青紫色の果実を作る植物で、北欧を原産とする、ブルーベリーの近縁種です。

 

ビルベリーの木は、北欧の森林地帯を中心に自生している低木で、現在は北米やアジアの一部地域でも見られるようになっています。ビルベリーの果実は食用可能で、その酸味が強く味わい深い実は古くから親しまれ、主にジャムやジュース、お酒などへ加工されて、ヨーロッパの食生活の一部として愛用されてきました。

 

ビルベリーは、酸性で適度に湿った特殊な土壌で生育し、環境の変化に弱いことから、人工栽培による産業利用が難しいことが知られているため、自生しているビルベリーの果実を摘み取ることで、さまざまな製品に利用されています(1)。そのため、その入手のしにくさからビルベリーは商業価値の高い果実として知られています。

 

ビルベリーの健康増進・維持への働き

 

ビルベリーは食品としての利用だけでなく、中世ヨーロッパからハーブのひとつとして、吐き気や下痢、さまざまな炎症に対して利用されてきた歴史があり、健康を増進する豊富な栄養源としても重宝されてきました(2)

 

ヨーロッパでは、医薬品や薬用植物を管理する欧州医薬品庁により、ビルベリーの果実やそのエキスが薬用植物として認められています(3)

 

ビルベリーはさまざまな栄養を含んでいますが、なかでもアントシアニンは、私たちの健康をサポートする幅広い働きで、特に良く知られています。ビルベリーは、ベリー類の中でも豊富にアントシアニンを含んでいることが知られており、健康食品やサプリメントとしても注目を集めています(4)

 

ビルベリーに豊富に含まれるアントシアニンとは?

 

アントシアニンは、自然界に広く存在する植物性の天然色素で、非常に強力な抗酸化作用を持つ生理活性物質です。

 

アントシアニンは青紫色を示す色素で、アントシアニンを作る植物にとっては、刺激の強い紫外線を吸収することで、その身を守る働きをしています(5)。アントシアニンは、私たちが摂取すると、抗炎症作用、抗酸化作用、抗糖尿病作用、抗がん作用、心血管保護作用、抗アルツハイマー病作用、抗菌作用、抗肥満作用などのさまざまな働きをすることが研究で示唆されている栄養成分で、高い関心を集めています(2)

 

このアントシアニンを豊富に含むビルベリーも、さまざまな研究で幅広い効能が示唆されており、注目を集めています。

 

ビルベリーの豊富な栄養成分

 

ビルベリーはアントシアニンを豊富に含むことで注目を集めていますが、アントシアニン以外にもさまざまな栄養成分を含むことが知られています。

 

たとえばビルベリーの果実には、心血管を保護する働きが報告されているケルセチンや、抗酸化作用を示すプロシアニジン、体内でビタミンAとして働くβ-カロテン、目の網膜を保護する色素として知られるルテインやゼアキサンチンが含まれているほか、多糖類も豊富に含まれていることが知られています(6)。これらの豊富な栄養成分が、ビルベリーの健康への働きに貢献していると考えられています。

 

それでは、ビルベリーに期待されている代表的な効能と、それを確認した研究報告について解説していきます。

 

ビルベリーの効能に関する研究報告を解説!

 

目の健康をサポートする働き

 

ビルベリーの効能のなかでも、目の健康をサポートする働きは、最もよく研究されてきたもののひとつです。目の健康に関する研究が特によく進められた背景には、第二次世界大戦まで遡るビルベリーのある逸話が関わっています。

 

ビルベリーには「第二次世界大戦時のイギリス空軍が夜間視力を補うためにビルベリージャムを食べていた」という逸話があり、この逸話の真偽とともに、目の機能をサポートするビルベリーの働きを確かめるため、さまざまな研究が実施されてきました(6)。それにより、ビルベリーが持つ目へのさまざまな効果が示唆されています。

 

たとえば、ディスプレイ端末の長時間の使用による視機能低下に対するビルベリーエキスの効能を調べた研究では、ビルベリーエキスの摂取によって眼精疲労の原因となる毛様体筋の緊張が緩和されたことが報告されています。

 

この研究では、健康な成人にビルベリーエキスまたはプラセボを1日1回240mg、12週間摂取しながら定期的にディスプレイ端末を用いたタスクをこなしてもらい、目のピント調節機能に関わる毛様体筋という目の筋肉の緊張度を評価しました。その結果、8週間経過時点でビルベリーエキス摂取群の毛様体筋の緊張度がプラセボ群に比べ大幅に低くなり、12週間経過後も毛様体筋の緊張が有意に低かったと報告されています(7)

 

また、ビルベリーが持つドライアイへの効能を示唆する研究も報告されています。

 

この研究では、ドライアイを抱えるボランティアを対象に、ビルベリー果実から抽出したエキスまたはプラセボを4週間摂取してもらい、涙液分泌量などを評価しました。その結果、ビルベリーエキスを摂取したグループにおいて、プラセボと比べ有意に涙液分泌量が増えてドライアイが軽減されたことが報告されています​(​8)

 

さらに、強度近視の子供を対象に、ビルベリーの近視を抑制する効果を確かめた研究では、ビルベリーを1年間摂取したグループで、近視の原因となる眼軸伸長を抑えることで、近視の進行が抑制された結果が報告されています(9)

 

これらの研究結果からも、ビルベリーが目の健康にさまざまな形で貢献することが示唆されています。

 

心血管の保護作用

 

アントシアニンは、その高い抗酸化力によって心血管の健康維持や肥満抑制をサポートすることが研究で示唆されています。そのため、アントシアニンを豊富に含むビルベリーにも同様の期待が集まり、さまざまな研究が実施され、その効能が報告されてきました。

 

たとえば、心血管疾患のリスクを抱えるボランティアを対象に、ビルベリーを含むジュースを摂取してもらった研究では、対象群と比べて収縮期血圧の低下や、「善玉コレステロール」として知られるHDLコレステロール濃度の上昇、血小板機能の改善が確認されており、ビルベリー摂取が心血管の健康に貢献する可能性が示唆されています​​(10)

 

また、高コレステロール血症患者を対象とした別の研究でも、ビルベリーから精製したアントシアニンを1日320mg、24週間継続して摂取してもらった結果、​​HDLコレステロールが増加したとともに、「悪玉コレステロール」として知られるLDLコレステロール濃度が低下した結果が報告されています(11)

 

これらの結果からも、ビルベリーには血中脂質を正常に保ち、心血管の健康をサポートする働きもあることが示唆されており、その幅広い効能が期待されています。

 

抗炎症作用

 

ビルベリーは、アントシアニンをはじめとした抗酸化物質を豊富に含むことや、古くからヨーロッパで炎症を抑えるハーブとして利用されてきた歴史から、抗炎症作用についてもさまざまな研究が実施され、その効果が報告されてきました。

 

慢性的な炎症が起きることが知られるメタボリックシンドローム患者を対象とした研究では、8週間にわたり毎日新鮮なビルベリー400gを食事から摂取してもらい、炎症に関連する物質の血中濃度の変化や、炎症の状態を評価しました。その結果、血中のCRPやIL-6などの炎症マーカーの濃度が低下し、炎症反応を評価するスコアが有意に改善したと報告されています(12)

 

また、歯肉炎患者に1日500gのビルベリーを摂取してもらった研究では、わずか7日間で炎症性サイトカインの産生が有意に低下し、歯周ポケットの深さを測るプロービングという検査での出血も減少したと報告されています(13)

 

炎症反応はさまざまな部位で起こり多くの疾患と関わるため、ビルベリーの抗炎症作用はさまざまな場面に活用できると期待されています。

 

ビルベリー活用のポイント

 

ビルベリーはアントシアニンを豊富に含むことが知られていますが、実はビルベリーサプリメントは、製品によってそのアントシアニン含有量にバラツキがあることが知られています(14)。そのため、アントシアニンの含有量に着目して製品を選ぶことは有効的だと考えられます。

 

またビルベリーエキスは、単体でも効能が報告されていますが、それだけでなく、DHAやEPAなどのオメガ3脂肪酸を豊富に含むことで知られるフィッシュオイルや、目を保護する抗酸化物質として知られるルテインと組み合わせた食事で摂取する研究でも、4週間の摂取で視覚テスト後の眼精疲労と精神的疲労が両方改善されたことが報告されています(15)。ビルベリーは、このような抗酸化物質を含む食品との相性も良いことが示唆されており、活用するうえで役立つ可能性があります。​​


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