成分と栄養素
亜鉛不足になるとどうなる?男性の活力維持に重要な亜鉛の働き、亜鉛不足によるリスク、亜鉛摂取のポイントをまとめて解説!

健康スペシャルティ
公開日 1970/01/01
最終更新日 2025/03/12

亜鉛は、食事からの摂取が必要な微量ミネラルのひとつで、私たちの体内にわずかな量しか存在しないにも関わらず、多くのタンパク質の構成に関わるほか、300種類以上の酵素の機能を支えるなど、健康的な組織の構造と機能の維持に貢献している重要な栄養素です。また亜鉛は、マカやアルギニンと並んで、滋養強壮効果や男性の活力をサポートする働きでもよく知られています。しかし、日本人は日常の食生活で亜鉛不足になりやすいことが指摘されており、亜鉛不足によるさまざまな悪影響が懸念されています。
この記事では、亜鉛のさまざまな働きとともに、亜鉛不足によるリスク、亜鉛不足を防ぐポイントを解説し、活力ある健康的な生活をサポートする情報をお届けします!
亜鉛とはどんな栄養素?
亜鉛の基本情報
亜鉛は、私たちの健康維持に不可欠な微量ミネラルという栄養素のうちのひとつです。
微量ミネラルとは、体内にわずかしか存在しないにも関わらず、体にとって非常に重要な役割を果たすミネラルです。実際に、私たちの体内には約2gしか亜鉛が存在していませんが、このわずかな亜鉛が体内のさまざまな場所で多くの物質と関わることで、私たちの健康は維持されています(1)。
亜鉛の重要性
私たちの体には亜鉛を必要とする物質が数多くあり、健康維持における亜鉛の重要性は広く知られています。全身のタンパク質のおよそ10%に亜鉛が関わっているとされており、300種類以上の酵素がその機能に亜鉛を必要としています(2)。
亜鉛は、これらの酵素の働きを支えることで、DNA合成やタンパク質合成、細胞増殖や分化などの細胞プロセスを正常に機能させています。それにより、筋肉や骨、皮膚などの組織の維持や、さまざまな器官の正常な働きに貢献しています。
また、亜鉛は酵素だけではなく、血糖を調節するインスリンのようなホルモンにも関与していることが知られており、亜鉛の摂取は健康維持において非常に重要です。
亜鉛の主な働きと亜鉛不足によるリスク
亜鉛は、私たちの健康を維持するさまざまな物質の形成に関わっており、その機能も多岐にわたります。この項目では、亜鉛の代表的な働きとともに、亜鉛が不足してしまうとどのような悪影響があるのかについて解説していきます!
亜鉛による健康的な組織の維持
亜鉛は、細胞分裂や細胞機能に関わるさまざまな酵素をサポートすることで、正常な組織の維持に貢献しています。
たとえば、亜鉛は筋肉の維持に重要な働きをしていることが知られています。亜鉛は、私たちの筋肉の素となる筋芽細胞の増殖や分化を促進するほか、筋細胞の活性にも関わることがさまざまな研究で報告されており、正常な筋組織の形成と維持に貢献していると考えられています(3)。亜鉛は、タンパク質を酸化ストレスから守る抗酸化物質としても働くため、亜鉛の欠乏は筋組織の維持や運動機能に深刻な悪影響を与えると考えられています。
また、亜鉛は骨形成などの骨の代謝を担う酵素の働きを支えることで、骨の組織と機能を維持するうえでも欠かせない役割を果たしています。亜鉛が欠乏すると、骨粗鬆症のリスクが高まることなどが知られており、亜鉛は骨の健康にも重要な栄養素だと考えられています(4)。
さらに、亜鉛は皮膚の健康にも関わっており、亜鉛が欠乏すると、皮膚の炎症や創傷治癒の遅延を引き起こすだけでなく、脱毛にも繋がる可能性が示唆されています(5)。
他にも、亜鉛は正常な味覚に必要な栄養素で、亜鉛不足は味を感知する味蕾という細胞のターンオーバーを遅らせて味覚障害を引き起こすことも知られており、亜鉛はさまざまな組織の維持に貢献する栄養素として重要視されています。
亜鉛による正常な免疫機能の維持
亜鉛は、免疫機能においても重要な役割を果たしていることが知られています。
亜鉛は、免疫細胞の働きや抗体の産生、炎症反応の調節などに関わるほか、抗酸化作用も発揮することで、感染と過剰な炎症反応の両方を防ぐ、適切な免疫機能の維持に貢献しています(6)。亜鉛不足は、免疫機能の低下や過度な炎症反応などに繋がると考えられており、亜鉛は正常な免疫機能を維持するうえでも大切な栄養素です。
また、亜鉛不足は正常な免疫機能を妨げることで、アレルギー疾患にも関わると考えられています。アレルギー疾患患者を対象に亜鉛を補給したさまざまな研究で、症状の改善などの良好な結果が報告されており、亜鉛のアレルギー疾患における重要性も示唆されています(7)。
亜鉛によるホルモン合成のサポート
亜鉛は、体のさまざまな機能の調節を担うホルモンにも深く関わり、正常な内分泌系の維持に貢献しています。
たとえば、亜鉛は血液中の糖の代謝を管理するインスリンの合成や貯蔵に必要な成分であり、慢性的な亜鉛不足は糖尿病や肥満のリスクとなることが示唆されています(8)。
80,000人以上を対象に亜鉛の摂取状況と糖尿病発症リスクの関係を分析した研究で、亜鉛の摂取量が不足している人は、十分に摂取している人と比べて糖尿病の発症リスクが高まる分析結果が報告されており、十分な亜鉛の摂取が糖尿病リスクの管理にも有益である可能性が示唆されています(9)。
亜鉛による健全な生殖機能の維持
亜鉛は、男性の生殖機能をサポートする働きでも非常によく知られています。
亜鉛は、精子の成熟や運動性に関わることや、その抗酸化作用により精子を保護することなどが知られており、正常な精子の機能維持に不可欠な働きをしています。そのため、亜鉛の欠乏は男性の生殖機能に重大な悪影響を及ぼすと考えられています(10)。
また、亜鉛は前立腺の健康にも深く関わっており、高濃度の亜鉛が前立腺で働くことで、前立腺肥大や前立腺がんを防いでいると考えられています(11)。前立腺肥大は、多くの高齢男性が抱える悩みのひとつである頻尿の要因として知られており、十分な亜鉛の摂取は性機能を維持するだけではなく、生活の質の低下を抑えるうえでも効果的に働くと考えられています。
亜鉛不足の原因は?
亜鉛不足の主な要因は、偏った食生活による亜鉛の摂取不足です。亜鉛は肉や魚介類などの動物性食品に豊富に含まれますが、加工食品に偏った食事やダイエットによりこれらの摂取が不足すると、亜鉛不足に繋がると考えられています。
また、人間ドックを受診した日本人を対象とした研究では、男性の4割以上が潜在的な亜鉛欠乏状態だったことに加え、男性は年齢が上がるほど亜鉛不足の人の割合が高くなるという関連性があったことが報告されています(12)。高齢になると、食事からの亜鉛の摂取が不足することや、加齢に伴う炎症反応や疾患によって亜鉛が消費されてしまうことで、亜鉛不足に陥りやすくなると考えられています。
さらにこの研究では、亜鉛不足のグループは毎日飲酒している人の割合が高く、飲酒による影響も示唆されています。アルコールは、尿からの亜鉛の排泄を促すことで体内の亜鉛を減らしてしまうと考えられており、亜鉛不足の要因のひとつと考えられています。
亜鉛は体内に貯蔵できる量が少ないため、消費や排泄による減少を補うことができるよう、十分な亜鉛の摂取を継続することが重要となります。
亜鉛不足対策のポイントを解説!
亜鉛を豊富に含む食品は?
亜鉛不足を防ぐためには、食生活に亜鉛含有量の多い食品を取り入れて、バランス良く継続的に摂取することをおすすめします。そこで以下の表1では、亜鉛含有量の多い食品トップ10をまとめました!
表1. 亜鉛含有量の多い食品トップ10(13)
順位 | 食品名 | 可食部100 gに含まれる亜鉛の量 (mg) |
1位 | 牡蠣(水煮) | 18.0 |
2位 | 小麦はいが | 16.0 |
3位 | 牡蠣(生) | 14.0 |
4位 | カツオ類(塩辛) | 12.0 |
5位 | パプリカ(香辛料粉末) | 10.0 |
6位 | ボラ(カラスミ) | 9.3 |
7位 | うし(ビーフジャーキー) | 8.8 |
8位 | ぶた(スモークレバー) | 8.7 |
9位 | ごま鯖(鯖節) | 8.4 |
10位 | カタクチイワシ(田作り) | 7.9 |
亜鉛を豊富に含む食材として知られる牡蠣以外に、豚や牛、魚などの動物性食品にも亜鉛は多く含まれており、これらの食品を日常に取り入れると亜鉛不足対策として効果的です。ただし、これらの食品は高コレステロールや高脂肪にも注意が必要であり、亜鉛含有量の高い食品に偏った食事はかえって体に負担をかける可能性があります。
そのため、バランスの良い食生活を意識するほか、亜鉛を含む健康食品やサプリメントも一つの方法として取り入れることで、体に大きな負担をかけずに亜鉛を摂取することができます。
亜鉛の1日の推奨摂取量は?
亜鉛の摂取目安量や耐用上限量は、厚生労働省が定める「日本人の食事摂取基準(2025年版)」にて、表2のように年齢に合わせて設定されています。
表2. 日本人の亜鉛の食事摂取基準(mg / 日)(14)
性別 |
男性 |
女性 |
||||
年齢等 |
推奨量 |
目安量 |
耐容上限量 |
推奨量 |
目安量 |
耐容上限量 |
0〜5(月) |
― |
1.5 |
― |
― |
1.5 |
― |
6~11(月) |
― |
2.0 |
― |
― |
2.0 |
― |
1〜2(歳) |
3.5 |
― |
― |
3.0 |
― |
― |
3〜5(歳) |
4.0 |
― |
― |
3.5 |
― |
― |
6〜7(歳) |
5.0 |
― |
― |
4.5 |
― |
― |
8〜9(歳) |
5.5 |
― |
― |
5.5 |
― |
― |
10~11(歳) |
8.0 |
― |
― |
7.5 |
― |
― |
12~14(歳) |
8.5 |
― |
― |
8.5 |
― |
― |
15~17(歳) |
10.0 |
― |
― |
8.0 |
― |
― |
18~29(歳) |
9.0 |
― |
40 |
7.5 |
― |
35 |
30~49(歳) |
9.5 |
― |
45 |
8.0 |
― |
35 |
50~64(歳) |
9.5 |
― |
45 |
8.0 |
― |
35 |
65~74(歳) |
9.0 |
― |
45 |
7.5 |
― |
35 |
75以上(歳) |
9.0 |
― |
40 |
7.0 |
― |
35 |
妊婦(付加量) 中期・後期 |
+2.0 |
― |
― |
|||
授乳婦(付加量) |
+3.0 |
― |
― |
30〜64歳の男性については、1日あたり9.5mgの亜鉛の摂取が推奨されていますが、令和元年国民健康・栄養調査では、亜鉛の摂取量平均が40代で1日9.4mg、50代で9.2mgとなっており、十分に摂取できているとはいえない状況が続いています(15)。
そのため、食生活へ亜鉛が豊富に含まれる食材を意識的に取り入れるほか、健康食品やサプリメントを活用することで不足分を補うと、亜鉛不足対策に効果的だと考えられます。
亜鉛の副作用は?摂りすぎるとどうなる?
表2の耐容上限量を超える高用量の亜鉛を摂取した場合、食欲不振、吐き気、嘔吐、下痢などの症状が現れる可能性がありますが、これらの症状は摂取をやめれば緩和される可能性が高いです。ただし、長期的に過剰摂取を続けてしまうと、貧血や酵素の機能障害を招く恐れがあるため、適切な亜鉛摂取が重要です。
亜鉛摂取が活力ある生活をサポート!
亜鉛はさまざまな酵素を支える働きをしており、生理機能にも深く関わる重要な栄養素です。一般的な生活をしている場合、重度の欠乏状態になることは多くありませんが、慢性的な亜鉛不足は日本人でも多くみられており、十分な摂取が必要となります。亜鉛の継続的な摂取は、気力を持続させ、活力ある健康的な生活の助けになることが期待できるため、意識的に摂取すると良いでしょう!
参考資料:
-
Zinc and its importance for human health: An integrative review - PMC
-
Role of zinc in health and disease | Clinical and Experimental Medicine
-
Zinc at the crossroads of exercise and proteostasis - ScienceDirect
-
The Role of Zinc in Bone Tissue Health and Regeneration-a Review - PubMed
-
Zinc Deficiency and Zinc Supplementation in Allergic Diseases
-
Role of Zinc Homeostasis in the Pathogenesis of Diabetes and Obesity
-
Prospective Study of Zinc Intake and Risk of Type 2 Diabetes in Women
-
Zinc Deficiency in Men Over 50 and Its Implications in Prostate Disorders