成分と栄養素
マグネシウムが睡眠の質を向上させる?良い睡眠をサポートするマグネシウムの効果を解説!

健康スペシャルティ
公開日 1970/01/01
最終更新日 2025/08/29

私たちにとって睡眠は、日中の疲れを回復するだけではなく、全身の健康を維持するうえでも欠かせない重要な休息行動です。睡眠不足は、心疾患や代謝疾患、神経疾患などのさまざまな病気の発症と悪化に関連し、心身の健康を脅かす重大なリスクとなることが知られており、死亡率の上昇にも関与することが明らかとされています。しかし、日本人は世界的に見ても睡眠時間が特に短く、十分な休息を取れない人が多いことで知られています。そのなかで、身近なミネラルであるマグネシウムが、睡眠へ効果を発揮することがさまざまな研究で示唆され、注目を浴びています。
この記事では、良質な眠りをサポートすることが示唆されるマグネシウムについて、基本情報から睡眠への効果に関する研究報告、摂取量の目安や豊富に含む食べ物まで、まとめて解説します!
マグネシウムとはどんな栄養素?
マグネシウムの基本情報
マグネシウムは、私たちが生きるうえで欠かせないミネラルの一種で、食事から摂取する必要がある「必須ミネラル」のひとつとしても知られる重要な栄養素です。
私たちの体内にあるマグネシウムは、半分以上が骨に存在しており、カルシウムとともに骨の形成を支えていることがよく知られています。また、マグネシウムは筋肉の弛緩を促すことも知られており、筋肉の収縮を促すカルシウムとともに、筋肉の適切な機能を支えています。
マグネシウムは骨や筋肉だけではなく、300種類以上の酵素の働きをサポートするほか、神経情報の伝達、エネルギー産生、体温・血圧の調整などにも深く関わっており、幅広い機能によって私たちの健康を支える栄養素であることが知られています(1)。
マグネシウム摂取の重要性
マグネシウムは、さまざまな機能で私たちの健康を支えており、不足してしまうと多くの悪影響が生じてしまいます。
たとえば、血清マグネシウム濃度が基準値を下回る低マグネシウム血症になると、吐き気や筋肉の痙攣、脱力感や食欲不振などの症状があらわれます(2)。
また、マグネシウムの欠乏は、糖尿病や骨粗鬆症、心疾患などの身体疾患のリスクと、うつや不安などの精神疾患のリスクの両方に関わることが示唆されています(3)。
欠乏した場合の悪影響からもマグネシウムの重要性はよく知られていますが、マグネシウムの摂取の効果を調べた多くの研究報告からも、マグネシウムの重要性は支持されています。
たとえば近年、マグネシウムの摂取が抑うつ状態の改善に効果を発揮するというメタ分析研究が報告されており、脳機能へのマグネシウムの効果が注目されています(4)。
さらにマグネシウムは、睡眠をサポートする機能についてもさまざまな研究で明らかとされてきており、その効果に関心を集めています。
マグネシウムの睡眠に関わる働き
神経の興奮を抑える働き
マグネシウムは、神経の興奮を抑制する働きにより、睡眠をサポートすると考えられています。
私たちの脳機能には、神経の興奮と抑制のバランスが非常に重要となります。アクセルのような役割を担う興奮性の神経伝達と、ブレーキのような役割を担う抑制性の神経伝達が適切にコントロールされることで、睡眠と覚醒の切り替えや、ストレスへの対応など、さまざまな脳機能が適切に発揮されています。
マグネシウムは、興奮性の神経伝達を抑える役割を担っており、過度な興奮を抑制すると同時に、必要なときに適切な興奮性の神経伝達が起きるようコントロールすることで、睡眠をサポートするほか、私たちの記憶力や学習能力にも貢献していると考えられています(5)。
また、マグネシウムは抑制性の神経伝達物質として働くGABAの機能をサポートすることも知られており、気分をリラックスさせるうえで重要な役割を果たすと考えられています(6)。
マグネシウムは、神経の興奮を伝える経路の過剰な働きを抑えるとともに、神経を鎮める経路の働きを支えることで、過度な興奮や不安を緩和し、リラックスした睡眠をサポートすると考えられています。
ホルモン分泌を調節する働き
マグネシウムは、中枢神経の興奮を抑えるだけでなく、「睡眠ホルモン」として知られるメラトニンや、覚醒を促すコルチゾールなどのホルモン分泌を調節する機能でも、睡眠をサポートすることが示唆されています。
メラトニンは、約1日の周期で繰り返されている体温や睡眠の変動(概日リズム)を調節するホルモンで、特に睡眠における重要性がよく知られています。私たちは眠っている間、レム睡眠とノンレム睡眠を繰り返す睡眠サイクルで脳を休息させており、メラトニンはこの睡眠サイクルを適切に整える働きをしていることから、睡眠の質の維持に欠かせないホルモンだと考えられています(7)。
一方、コルチゾールはエネルギーを生み出す代謝を促進するホルモンで、概日リズムに合わせて朝方に分泌が増える特徴があり、目覚めを促す働きをしています(8)。
マグネシウムは、睡眠を促すメラトニンの分泌を促進するとともに、覚醒を促すコルチゾールの分泌を調節する可能性が示唆されており、睡眠に関わるホルモン分泌を調節する働きによっても、睡眠に適した状態への誘導をサポートすると考えられています。
マグネシウムの睡眠への効果に関する研究報告
マグネシウムの摂取による影響を確かめたさまざまな研究で、マグネシウムの睡眠をサポートする効果が示唆されています。
不眠症を抱える人の割合が多いことで知られる高齢者を対象とした研究では、ボランティアに酸化マグネシウムまたはプラセボを8週間摂取してもらい、睡眠状況と、睡眠を促すメラトニンなどのホルモンの分泌量を観察しました。その結果、酸化マグネシウムを摂取したグループでは、睡眠時間や睡眠効率、メラトニンの血中濃度が増加したとともに、入眠までの時間が減少したことが報告されており、マグネシウムの摂取による睡眠改善効果が示唆されています(9)。
また、睡眠している間の脳波と、覚醒を促すコルチゾールなどのホルモンの分泌量を調べた研究では、マグネシウムを摂取したグループで、ノンレム睡眠が増加したことや、睡眠中のコルチゾール分泌量が低下したことが報告されています(10)。
さらに、睡眠をサポートする働きで知られるビタミンB6やビタミンB12などと組み合わせた研究でも、睡眠を改善する効果が示唆されています。酸化マグネシウムやビタミンB6、ビタミンB12などを含む複合体を睡眠の1時間前に摂取したグループでは、3ヶ月の摂取期間後に不眠症が改善されたことが報告されています(11)。
さまざまな研究の結果から、マグネシウムが睡眠を改善するうえで効果を発揮することが示唆されています。
マグネシウムの推奨摂取量
マグネシウムの推奨摂取量は、成人男性で1日340〜380mg、成人女性で1日280〜290mgとされています(2)。
通常の生活で重度のマグネシウムの欠乏が起こることは稀ですが、現代の日本人の食生活はマグネシウムが不足しやすいことが知られています。令和元年に公表された国民の摂取状況に関する調査結果では、男性で1日平均261mg、女性で1日平均235mgと、実際のマグネシウム摂取状況が推奨摂取量を大きく下回っていることが報告されています(12)。
また、現代の食生活で過剰に摂取しやすい塩分は、体内のマグネシウムの排泄を促してしまうため、マグネシウムを意識的に摂取することがより重要となります。
マグネシウム摂取の上限量は、通常の食品からについては上限量が設定されておらず、通常の食品以外からの摂取について1日350mgと設定されています(2)。サプリメントなどを活用する場合は、1日350mgまでの範囲内で摂取すると良いでしょう。
マグネシウムを豊富に含む食べ物
マグネシウムは、海藻類や魚介類、ナッツ類に豊富に含まれることが知られており、特に海藻類はマグネシウムを多く含んでいます。
たとえば、あおさやわかめは素干しの状態だと100gあたりに1,000mg以上のマグネシウムを含んでおり、特にマグネシウムが豊富な食材として知られています(13)。そのため、魚介類や海藻類を意識的に摂取すると、マグネシウムを補給するうえで効果的です。
また、食生活へ取り入れやすいアーモンドやほうれん草、納豆などもマグネシウムが豊富で、これらの食品を活用することも効果的です。
近年は、マグネシウムを含有するサプリメントも多く流通しており、GABAやビタミンB6、ビタミンB12などとあわせて摂取できる製品もあるため、特に睡眠を意識して摂取したい場合は、これらが役立つと考えられます。
良い睡眠を送るポイントとマグネシウムの活用
私たちの睡眠は、非常に多くの要因から影響を受けています。そのなかで、良い睡眠を送るために特に重要となるポイントとしては、過不足のない睡眠時間を確保することと、夜間しっかりと休むために日中の生活を整えることが挙げられます。
たとえば、睡眠不足を意識するあまり布団で長時間過ごすようにしてしまうと、かえってスムーズな入眠を妨げてしまう恐れがあるため、日中はしっかりと活動して、必要な時間だけ布団に入るといった、メリハリのある生活リズムを維持することが重要です。
また、日光を浴びて概日リズムを整えるホルモンの分泌を促すことや、カフェインやアルコールなどの睡眠の質の低下に繋がる嗜好品を抑えることも重要です。
これらの基本的な対策を意識しながら、睡眠をサポートする効果がさまざまな研究で示唆されているマグネシウムを意識的に摂取すると、毎朝リフレッシュできる良い睡眠に繋がると同時に、健康を支えることもできると考えられます。