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眠くなる食べ物とはどんなもの?睡眠をサポートする食品成分と豊富な食べ物を解説!

健康スペシャルティ
公開日 1970/01/01
最終更新日 2025/09/10

睡眠不足や睡眠の質の低下は、日中の疲れや集中力の低下を招くだけではなく、全身の機能に悪影響を与え、さまざまな疾患のリスクになることが知られています。しかし日本人は、世界的に見ても睡眠時間が短く、睡眠の質の低下も重なることで十分な休息を取れない人が多いため、良い睡眠を取ることへの関心が非常に高まっています。そのなかで、睡眠に効果を発揮する食品成分が近年注目を浴びていますが、一体どのような食べ物が睡眠をサポートしてくれるのでしょうか?
この記事では、良質な眠りをサポートする食品成分と、それらを豊富に含む食べ物を解説していき、日々忙しい皆さんがしっかり休むうえで役立つ情報をご紹介します!
良い睡眠を取るポイントとは?
睡眠の重要性
私たちにとって睡眠は、疲労回復の手段であると同時に、心身の健康を支えるうえでも重要な休息行動であることが知られています。睡眠不足や睡眠の質の低下は、心血管・脳血管・代謝・免疫・認知機能・メンタルヘルスといった全身の健康に悪影響を与え、さまざまな疾患のリスクになることから、良い睡眠習慣を作ることが非常に大切だと考えられています(1)。
しかし、日本人は男女ともに睡眠時間が短い国民性であることが知られており、平均睡眠時間が6時間未満の人の割合は4割にのぼるという調査結果もあります(2)。経済協力開発機構(OECD)による調査報告でも、対象33カ国のうち、日本人の平均睡眠時間が最も短いとされており、世界的に見ても日本人が特に睡眠のトラブルを抱えやすいことが分かっています(3)。
そのため、疲労回復と健康維持に十分な睡眠時間を確保し、睡眠の質も改善することのできる「良い睡眠」を取る方法への関心が非常に高まっています。
良い睡眠を送るためのポイント
良い睡眠には、過不足のない睡眠時間を確保することと、夜間しっかりと休むために日中の生活を整えることが重要となります。
たとえば、睡眠不足を意識するあまり布団で長時間過ごすようにしてしまうと、「布団に入っても寝付けない」という感覚が残ってしまい、かえって入眠を妨げてしまう恐れがあります。そのため、日中はしっかりと活動して、夜は必要な時間の分だけ布団に入るといった、メリハリのある生活リズムを維持することが重要です。
また、日光を浴びて体内時計を整えるホルモンの分泌を促すことや、「眠らないといけない」と過度に意識せずリラックスすること、カフェインやアルコールなどの睡眠の質の低下に繋がる嗜好品を抑えることも効果的とされています(4)。
さらに近年は、睡眠に重要なホルモンや生理活性物質への理解が進み、睡眠の質の向上に役立つ食品成分が注目されています。一体どのような食べ物が睡眠をサポートしてくれるのでしょうか?
睡眠をサポートする食品成分が豊富な食べ物を解説!
睡眠をサポートする食品成分には、主に神経の興奮を抑える働きをするものと、体内時計の調節に関わるメラトニンなどのホルモン分泌を支えるものがあります。この記事では、それぞれ注目されている食品成分を解説しながら、豊富に含まれる食べ物をご紹介します!
GABA
GABAとは?
GABA(ギャバ)は、私たちの脳に存在しているアミノ酸の一種で、リラックス効果やストレスを緩和する効果、睡眠をサポートする効果でよく知られています。GABAは「γ-アミノ酪酸(Gamma-aminobutyric acid)」の略称で、私たちヒトをはじめとする哺乳類では、脳と脊髄からなる中枢神経系で、神経の興奮を抑える神経伝達物質として重要な役割を担っています。
睡眠をサポートするGABAの効果
GABAは、中枢神経系の興奮を抑える働きをすることから、リラックスや睡眠に効果を発揮すると考えられており、さまざまな研究でもその効果が示唆されています。
GABAのリラックス効果を確かめた研究では、GABAを摂取したグループで、ストレスによるアルファ波の減少が抑制されたことが確認されており、GABAにストレスの悪影響を緩和する効果があることが示唆されています(5)。
また、GABAの睡眠への効果を調べた研究では、GABAを摂取したグループで、「深い眠り」として知られるノンレム睡眠の時間が増加したとともに、ボランティア自身の主観評価でも睡眠の改善を実感できていたという結果が報告されています(6)。
GABAが持つ神経の興奮を抑える働きは、リラックスした状態へ促す作用を通して、睡眠のトラブルを抱える方に効果を発揮すると考えられています。
GABAを豊富に含む食べ物
GABAの含有量は、肉や魚などの動物性食品よりも、野菜などの植物性食品の方が多いことが知られています。
たとえば、トマトはGABAを豊富に含む食材としてよく知られており、トマト缶100gあたりには約95mgのGABAが含まれています。また、GABAが初めて単離された食材であるジャガイモや、メロンなどにも比較的多くのGABAが含まれています。GABAは発酵食品にも豊富なことが知られており、キムチや奈良漬、たくあんなどにも多く含まれています(7)。
近年は、GABAを配合したサプリメントも流通しているため、GABAを意識的に摂取するうえではサプリメントを活用することも効果的です。
セサミン
セサミンとは?
セサミンは、ゴマ特有の抗酸化物質のひとつで、ゴマの総重量の0.5%ほどしか含まれないとされる希少な成分です。セサミンはその強力な抗酸化作用により、疲労緩和や心血管の健康の維持に効果を発揮することで知られていますが、睡眠をサポートする効果も注目されています。
睡眠をサポートするセサミンの効果
不眠の悩みを持つボランティアを対象に、セサミンが持つ睡眠への効果を調べた研究では、セサミンを多く含む黒ゴマを摂取したグループで、大幅に睡眠の質が向上したという結果が報告されています(8)。
また、睡眠の質の低下に繋がることで知られる睡眠時無呼吸症候群のリスクを抱えるボランティアを対象とした研究では、セサミンを摂取したグループで、睡眠の質が向上したとともに、ボランティア自身が評価する日中の眠気も改善したという結果が報告されています(9)。
セサミンはその抗酸化作用により、睡眠にも効果を発揮することが示唆されています。
セサミンを豊富に含む食べ物
セサミンは、ゴマ特有の成分であるゴマリグナンの一種であるため、豊富に含む食べ物としてはゴマやゴマ油が最も代表的なものとなります。
しかし、セサミンはゴマの総重量のうち0.5%にも満たないため、ゴマやゴマ油のみでセサミンを摂取しようとすると、脂質などの他の成分も同時に摂取することとなり、かえって負担になる可能性があります。
そのため、セサミンを抽出したサプリメントを活用すると、過剰な脂質を摂取するリスクを考慮しながら、セサミンを日常に取り入れることができると考えられます。
マグネシウム
マグネシウムと睡眠の関係は?
マグネシウムは、ストレス反応に関わる多くの酵素の正常な機能に必要なミネラルで、欠乏してしまうと不安や不眠症に繋がることがさまざまな研究で示唆されている、重要な栄養素です。マグネシウムは、中枢神経系の興奮を抑えるだけではなく、睡眠を促すメラトニンを体内合成する過程で必要となる材料としても機能することが知られており、さまざまな形で睡眠をサポートすると考えられています(10)。
睡眠をサポートするマグネシウムの効果
不眠症を抱える人の割合が多いことで知られる高齢者を対象に、マグネシウムの摂取による睡眠への効果を確かめた研究では、マグネシウムを摂取したグループで、睡眠時間や睡眠効率、メラトニンの血中濃度の増加が確認されたとともに、入眠までの時間が減少したことも確認されており、マグネシウムの摂取による睡眠改善効果が示唆されています(11)。
マグネシウムを豊富に含む食べ物
マグネシウムは、海藻類や魚介類、ナッツ類に豊富に含まれることが知られており、特にアオサやワカメ、昆布などの海藻類はマグネシウムを多く含んでいます。そのため、魚介類や海藻類を意識的に摂取すると、マグネシウムを補給するうえで効果的です。また、アーモンドやほうれん草、納豆などもマグネシウムが豊富で、食生活へ取り入れやすいこれらの食品を活用することも効果的です。
マグネシウムの推奨摂取量は、成人男性で1日340〜370mg、成人女性で1日280〜290mgとされています(12)。現代の日本人の食生活は、マグネシウムが不足しやすいことに加え、マグネシウムの排泄を促す塩分を多く摂りやすいことが知られているため、意識的なマグネシウムの摂取が推奨されています。
良い睡眠を送るポイントのまとめ
私たちの睡眠は、日中の活動量や食生活、ストレスや睡眠前の行動など、さまざまな要因の影響を受けています。
そのなかで、中枢神経系の興奮を抑える働きをするGABAや、強力な抗酸化作用を発揮するセサミン、眠りを促すメラトニンの合成に必要なマグネシウムなど、さまざまな食品成分が睡眠へ効果を発揮することが示唆されています。
これらの食品成分を活用しながら、メリハリのある生活リズムを維持することや、過度に睡眠へ不安を抱かないよう意識するなどの基本的な対策をとることで、十分な疲労回復と心身の健康の維持を支える「良い睡眠」に繋がると考えられます。