加齢の悩み

加齢黄斑変性とは?3つの原因や検査方法、治療方法を解説

健康スペシャルティ

公開日 1970/01/01

最終更新日 2025/06/25

「視界の中心がぼやける」「歪んで見える」といった症状はありませんか?加齢黄斑変性は、視力の低下を引き起こし、進行すると失明のリスクもある目の病気です。

 

この病気は加齢や生活習慣、遺伝などが影響し、網膜の中心部分である黄斑に異常が生じます。しかし、初期の段階では気づきにくく、気づいたときには視力の回復が難しいケースもあります。早期発見・治療が視力を守る鍵となります。

 

本記事では、加齢黄斑変性の原因や検査方法、治療法について詳しく解説します。早期発見と予防のために、ぜひ最後までご覧ください。

 

視覚で重要な黄斑部とは?

 

黄斑部は網膜の中央に位置し、視細胞が密集している場所です。視細胞には錐体細胞と杆体細胞がありますが、黄斑部には特に錐体細胞が多く存在します。錐体細胞は色を識別し、細かい形を見分ける能力が高いです。そのため、黄斑部の働きが低下すると、視力の低下や色の識別が難しくなります。

 

黄斑部の中心には中心窩があり、ここには特に視細胞が集中しています。中心窩は最も解像度が高く、視覚の細かい識別を担う部位です。一方で黄斑部は加齢や病気によって変性しやすい部分でもあります。加齢黄斑変性や糖尿病網膜症などで影響を受けるため、黄斑部の健康を維持するためには、適切な食生活や生活習慣が大切です。

 

加齢黄斑変性症の病態

 

加齢黄斑変性症は高齢者に多く見られる眼疾患です。網膜の中心にある黄斑が変性し、視力の低下を引き起こします(1)。黄斑は視力を司る重要な部位であり、ここが障害されると視界の中心がぼやけたり歪んで見えやすいです。進行すると視野の中央が暗くなることもあります。

 

加齢黄斑変性症には萎縮型と滲出型の2種類があります。萎縮型は黄斑の細胞が徐々に減少し、ゆっくりと進行する病態です。一方、滲出型は新生血管が異常に増殖し、血液や浸出液が漏れ出すことで急激な視力低下をもたらします。滲出型は萎縮型よりも重症化しやすく、放置すると失明のリスクが高まります。

 

加齢が主な原因ですが、遺伝や喫煙、紫外線の影響も要因です(2)。特に喫煙は網膜にダメージを与え発症リスクを高める要因とされています。

 

加齢黄斑変性の3つの原因

 

加齢黄斑変性の原因は主に3つあります。

 

  • 加齢

  • 遺伝的要因

  • 環境的要因

 

詳しく解説します。

 

加齢

 

加齢によって黄斑が老化し、視細胞などが損傷を受けやすくなります。黄斑は網膜の中心部分に位置し、視力に重要な役割を持つ組織です。年齢とともに細胞の再生能力が低下し、老廃物が蓄積しやすくなります。これにより、網膜の機能が低下し、視力が徐々に衰えていきます。

 

黄斑部には色素細胞が存在し、光の刺激から網膜を保護する役割があります。しかし、加齢によりこの色素細胞の機能が衰えると、光のダメージを受けやすいです。また、血流の減少が影響し、黄斑への栄養供給が不十分になることで、視細胞の劣化が進行します。これにより、視界が歪んだり、中心部が見えにくくなる症状が現れやすくなります。

 

加齢による黄斑の変化は避けられませんが、生活習慣の改善によって進行を遅らせることが可能です。

 

遺伝的要因

 

加齢黄斑変性には遺伝的な影響があります。特に特定の遺伝子の変異がリスクを高めることが知られています。家族内に加齢黄斑変性の患者がいる場合、同じ疾患を発症する可能性が高いです(1)。

 

遺伝的要因だけでなく、環境要因も組み合わさることで発症リスクがさらに高まります。遺伝的リスクがある人でも、禁煙やバランスの取れた食事、適度な運動などを意識することで予防につながる可能性があります。

 

環境的要因

 

加齢黄斑変性は、環境の影響を大きく受ける病気です。特に喫煙、食生活、紫外線が発症リスクを高めます(2)。

 

喫煙は体内の活性酸素を増加させ、黄斑の細胞を傷つけやすいです。タバコに含まれる有害物質が血管にダメージを与え、目の血流が悪化します。食生活も重要です。野菜や果物の摂取が少なく、脂肪分の多い食事が中心になると、網膜の健康が損なわれます。そのため、ルテインやゼアキサンチンを多く含む食品を意識的に摂ることが予防につながります。

 

紫外線もリスク要因です。強い日差しを浴び続けると網膜がダメージを受け、黄斑変性の進行を促します。サングラスや帽子で目を保護することが大切です。環境要因の影響を減らすことが発症リスクの低下につながります。

 

加齢黄斑変性の検査方法

 

加齢黄斑変性の検査方法には以下の5つがあります。

 

  • 視力検査

  • 眼底検査

  • 光干渉断層計(OCT)

  • 蛍光眼底造影検査

  • アムスラー検査

 

それぞれ解説します。

 

視力検査

 

視力検査は、加齢黄斑変性の診断において重要な指標です。視力の低下や視野のゆがみが、黄斑部の異常を示すことがあります。一般的な視力検査では、視力表を用いて遠方や近方の視力を測定します。特にアムスラーチャートを使用すると、黄斑部の疾患による視野のゆがみが確認しやすいです。直線が波打って見えたり、一部が欠けたりする場合、黄斑変性の疑いがあります。異常を感じた場合は、速やかに眼科を受診し、詳細な検査を受けましょう。

 

眼底検査

 

眼底検査では、瞳孔を開く目薬を使用し、眼の奥を詳細に観察します。これにより、網膜や黄斑の異常を確認し、病気の進行度を判断します。特に加齢黄斑変性では、網膜の出血や浮腫が見られやすいです。検査後は目薬の影響で一時的に視界がぼやけることがありますが、時間が経てば元に戻ります。症状の早期発見に役立つため、定期的な検査が推奨されます。

 

光干渉断層計(OCT)

 

光干渉断層計(OCT)は、非侵襲的に網膜の断面を撮影できる機器です。光の干渉を利用して、高解像度の画像を取得できます(3)。網膜の厚さや構造の変化を詳細に観察できるため、黄斑部の状態を把握できます。加齢黄斑変性では、網膜の浮腫や新生血管の有無が重要な診断指標です。OCTを用いることで、黄斑の形状変化や異常の有無を正確に確認できます。検査は短時間で終了し、痛みを伴いません。

 

蛍光眼底造影検査

 

蛍光眼底造影検査は、網膜の血流や血管の異常を詳しく調べる検査です。腕の静脈から造影剤を注射し、眼底カメラで網膜の血管を撮影します。これにより、新生血管の有無や血液の漏れの程度を確認できます。特に滲出型加齢黄斑変性の診断に有効です。

 

造影剤が血流に乗って網膜の血管に到達すると、異常な血管が浮かび上がります。通常の眼底検査では見えない細かい変化も捉えることが可能です。検査中はまぶしさを感じることがありますが、短時間で終了します。検査後は一時的に尿の色が変わることがありますが、問題はありません。

 

アムスラー検査

 

アムスラー検査は、碁盤の目のような図を用いる視覚検査です。中央の黒い点を片目ずつ見つめ、線が歪んで見えたり、中心部分が暗く見えたりするかを確認します。異常がある場合、加齢黄斑変性の可能性が考えられます。

 

自宅で簡単に行えるため、定期的にチェックすると早期発見につながる検査です。明るい場所で適切な距離を保ち、眼鏡を使用している場合はかけたまま検査するとよいです。少しでも違和感があれば、眼科を受診して詳しい検査を受けましょう。

 

加齢黄斑変性の治療方法

 

加齢黄斑変性の治療法には、以下の3つがあります。

 

  • レーザー光凝固

  • 光線力学療法

  • 抗VEGF療法

 

詳しく解説します。

 

レーザー光凝固

 

レーザー光凝固は、加齢黄斑変性の治療法の一つです。黄斑部にある中心窩から離れた部位にある新生血管をレーザー光により凝固させます(1)。高エネルギーの光を病変部に照射し、異常な血管を焼灼することで病変の進行を抑えます。適用可能なケースは限られていますが、早期の滲出型加齢黄斑変性では有効です。照射部位によっては視野に影響を与えることがあり、慎重な判断が求められます。

 

治療は比較的短時間で完了し、外来での実施が可能です。治療後の経過観察が重要であり、再発のリスクも考慮しながら定期的な診察を受けることが推奨されます。レーザー光凝固は病状の進行を抑える目的で行われる治療で、視力の改善を目的とした治療ではありません。

 

光線力学療法

 

光線力学療法は、加齢黄斑変性の治療法の一つです。まず、光感受性物質を静脈内に投与し、新生血管に貯留させます。その後、特定の波長のレーザーを照射し、新生血管を選択的に閉塞させます。周囲の正常な網膜組織を傷つけずに治療できる点が特徴です(1)。光感受性物質は時間とともに分解され、体外へ排出されるため、副作用が比較的少ないです。治療後は一時的に光に対する過敏症が生じることがあるため、紫外線対策が必要になります。効果を維持するため、必要に応じて複数回の治療が必要な場合もあります。

 

抗VEGF療法

 

抗VEGF療法は、加齢黄斑変性の進行を抑える治療法です。血管新生にはVEGFが関与しているため、抗VEGF薬によって加齢黄斑変性で眼内に増加したVEGFを中和します(1)。これにより、異常な血管の増殖や漏出を防ぎ、視力の低下を抑制します。主に眼内注射で投与され、一定の間隔で継続的に行うことが必要です。

 

治療後の効果には個人差がありますが、視力の改善や維持が期待できます。副作用として、眼圧の上昇や感染症のリスクがあるため、適切な管理が重要です。

 

加齢黄斑変性の病態を知り、目の健康を維持しましょう

 

加齢黄斑変性は、視界の中心がぼやけたり歪んで見えたりする症状を引き起こす目の病気で、進行すると失明のリスクもあります。主な原因は加齢、遺伝、環境要因で、特に喫煙や紫外線の影響が大きいです。加齢により黄斑が老化し、細胞の再生能力が低下することで発症しやすくなります。

 

この疾患には、進行が緩やかな「萎縮型」と、急激に視力が低下する「滲出型」の2種類があります。検査方法としては、視力検査や眼底検査、光干渉断層計(OCT)などが用いられ、早期発見が重要です。治療には、レーザー光凝固、光線力学療法、抗VEGF療法などがあり、特に抗VEGF療法は滲出型の進行を抑える効果が期待されています。

 

予防のためには、禁煙や紫外線対策、ルテインやゼアキサンチンを含む食事の摂取が効果的です。定期的な眼科検診を受け、目の健康を維持することが大切です。


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