お体の悩み
慢性疲労症候群の2つの原因とは?疲労との違いや症状や治療方法も解説
健康スペシャルティ
公開日 1970/01/01
最終更新日 2024/10/29
慢性疲労症候群は長期間持続する症状が特徴的で、通常の疲労とは異なります。原因がわからず「ただの疲れではないのか」と捉えてしまうことも多いです。長期間休んでも改善せず、生活の質に大きく影響するため、原因の把握と適切な治療が大切です。
この記事では、慢性疲労症候群の原因や疲労との違い、症状・治療方法について解説していきます。長期間の疲労に悩んでいる方はぜひご覧ください。
慢性疲労症候群と疲労の違い
慢性疲労症候群と通常の疲労は「原因の有無」「発症期間」の2点で違いがあります。慢性疲労症候群は、感染症やストレスがきっかけで発症すると考えられますが、明確な原因は不明な場合が多いです。このようなきっかけを境に全身倦怠感、疲労感、微熱や頭痛、筋肉痛、抑うつ症状など多様な症状が出現します。症状は長期間持続し、休息を取っても改善しにくいです。そのため、日常生活に支障をきたします。
一方、通常の疲労は、運動をしすぎたり仕事をしすぎたりすることで感じます。このような疲労は短期的で、十分な睡眠や休養によって回復するものです。また、日常生活への支障はほとんどなく過ごせます。
慢性疲労症候群の症状
慢性疲労症候群の症状は多岐にわたり、患者の生活に大きな影響を与えます。主に以下の4つが挙げられます。
-
全身の倦怠感
-
微熱や頭痛などの風邪症状
-
思考力の低下
-
抑うつ症状
全身の倦怠感は、日常生活を送る上で障害となるほどの強い疲労感を伴うことが多いです。また、微熱や頭痛などの風邪に似た症状も頻繁に現れます。これらの症状は長期的に続き、生活の質を低下させます。さらに、思考力の低下も特徴的な症状で、集中力や記憶力が低下し、仕事や学業を以前のようにこなすことができなくなるでしょう。これらの症状による生活の質の低下や、社会生活への影響は抑うつ症状を引き起こす原因にもなります。
慢性疲労症候群の2つの原因
慢性疲労症候群の原因は大きく「環境要因」と「遺伝的要因」の2つに分けられます。それぞれ具体的に解説していきます。
環境要因
環境要因では以下の3つが挙げられます。
-
ウイルスの再活性化
-
身体的ストレス・精神的ストレス
-
アレルギーの病歴
それぞれ詳しく解説します。
ウイルスの再活性化
ウイルスの再活性化は免疫系の異常を引き起こし、慢性疲労症候群の発症や症状の持続に関与していると考えられます。風邪に似た症状が見られることから、ヘルペスウイルスやマイコプラズマなどの感染症との関連性が推察可能です(1)。これらの病原体が体内で再活性化することで、持続的な免疫異常が引き起こされ、慢性的な疲労状態につながる場合があります。
身体的・精神的ストレス
感染症や身体的・精神的ストレスが発症のきっかけとなることが多いです。これらの要因は、体内の内分泌系や免疫系に異常をもたらすためと考えられます。具体的には、インターフェロンやサイトカインといった疲労原因物質の異常産生が疲労症状を引き起こす要因ではないかという仮説が立てられています。
幼少期の虐待やネグレクトなどのトラウマも慢性疲労症候群発症のリスクを高める要因です(2)。また、慢性疲労症候群の患者では、自分の感情を認識し表現することが難しい傾向です。これらのことから身体的・精神的ストレスの影響が考えられます。
アレルギーの病歴
アレルギーの病歴も関わっています。慢性疲労症候群の患者には、アレルギーの病歴を持つ人が多く、さまざまな免疫異常が報告されています(1)。具体的には抗核抗体の出現、免疫グロブリン異常、免疫細胞の機能低下などです。明確な根拠は見つかっていませんが、アレルギーの既往と関連している可能性があります。
遺伝的要因
遺伝的原因によるセロトニン代謝の違いがストレスに対する抵抗性の違いに影響し、発症に関与している可能性があります。同じストレスを受けても代謝が異なるとよりストレスを感じやすくなるでしょう。これらの遺伝的背景が、環境要因と相互作用することで慢性疲労症候群の発症リスクを高めている可能性があります。
慢性疲労症候群の治療方法
慢性疲労症候群の治療方法は主に3つあります。
-
ビタミンB12・ビタミンCの摂取
-
症状に合わせた薬剤の使用
-
心理的アプローチ
それぞれの治療方法を解説していきます。
ビタミンB12・ビタミンCの摂取
慢性疲労症候群ではビタミンB12やビタミンCの摂取が効果的ですビタミンB12は神経細胞の機能回復に関与し、慢性疲労症候群に伴う神経症状の改善に効果があると考えられます(1)。一方、ビタミンCは抗酸化作用を持ち、免疫機能促進や抗炎症作用を通じて症状の緩和に貢献します。これらのビタミンを適切に摂取することで、症状の改善が期待できるでしょう。ビタミンBとビタミンCは水溶性であり、2〜3時間で尿中に排出されるため、持続型の製品を選ぶのがおすすめです。
ビタミンDの摂取
ビタミンDは骨に必要な栄養素という認識がありますが、疲労や頭痛・うつなどの症状にも効果的です。そのメカニズムとして、セロトニン量の調整が考えられています。セロトニンは脳内の神経伝達物質で情動コントロールに働きます。セロトニンの不足は、疲労や不安、うつ症状などを引き起こすため、ビタミンDを摂取してセロトニン量を調節するのが大切です(3)。また、ビタミンDは脂溶性で水に溶けにくいため、油脂が含まれる食べ物と一緒に摂取するか、魚油を含むサプリメントを摂取するのがおすすめです。
症状に合わせた薬剤の使用
慢性疲労症候群の背景に感染症の関与が疑われる場合は、抗菌薬や抗ウイルス薬を使用します(1)。これらの薬剤によって感染源を排除することで、症状の改善を図ることが可能です。また、痛みに対しては、非ステロイド性鎮痛薬が処方されることがあります。これらの薬剤は、筋肉痛や関節痛、頭痛などの緩和に効果を発揮します。さらに、抑うつ症状がある場合には、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の使用を検討します。SSRIは抑うつ症状の改善だけでなく、慢性疲労症候群に特徴的な疲労感や疼痛の軽減にも効果的です。
心理的アプローチ
心理的アプローチも慢性疲労症候群の治療において欠かせません。慢性疲労症候群によって日常生活に支障が生じると、疾患自体がさらなるストレスとなり、症状を持続・悪化させる要因となります。そのため、認知行動療法などの心理療法を通じて、患者の思考パターンや行動パターンを改善し、症状との付き合い方を学ぶことが大切です。これにより、症状管理の改善や生活の質の向上が期待できます。
さらに、ストレス管理も大切な要素です。瞑想やマインドフルネス、リラクセーション技法などを日常生活に取り入れることで、ストレスレベルの低下や症状の緩和が期待できます。これらのアプローチは、自律神経系のバランスを整え、身体的・精神的な緊張を和らげるのに効果的です。
まとめ
慢性疲労症候群は、通常の疲労とは異なり、明確な原因がなく長期間持続する症状が特徴的です。主な原因として環境要因と遺伝的要因が考えられ、環境要因はウイルスの再活性化、身体的・精神的ストレス、アレルギーの病歴などで、遺伝的要因はセロトニン代謝の違いなどです。
症状は全身の倦怠感、微熱や頭痛、思考力の低下、抑うつ症状など多岐にわたり、日常生活に大きな影響を与えます。治療方法としては、ビタミンB12・ビタミンCの摂取、症状に合わせた薬剤の使用、心理的アプローチが挙げられます。特に心理的アプローチでは、認知行動療法やストレス管理技法を用いて症状との付き合い方を学び、生活の質の向上を図ります。慢性疲労症候群は複雑な疾患であり、個々の症状や背景に応じた総合的なアプローチが必要とされます。