加齢の悩み

アルツハイマー病の症状とは?治療や予防方法についても解説!

健康スペシャルティ

公開日 2024/08/13

最終更新日 2024/10/22

アルツハイマー病は目立った症状なくいつの間にか進行していることも少なくないです。そのため、どのような症状が出現するのか知っておくことで、早期発見・早期治療が可能になります。

この記事では、アルツハイマー病の症状や治療、予防方法について解説していきます。自分の症状、または家族の症状に気づけるようにアルツハイマー病を理解していきましょう。

 

アルツハイマー病の原因

 

アルツハイマー病の主な原因は、脳内におけるアミロイドβタンパク質とタウタンパク質の異常な蓄積です。これらのタンパク質が脳細胞に沈着し、神経細胞の機能を阻害することで、認知機能の低下が引き起こされます。この過程は長年にわたって緩やかに進行し、海馬や大脳皮質の萎縮などをもたらします(1)。

 

アルツハイマー病の症状

 

アルツハイマー病の症状として、以下の5つがあります。

 

  • 見当識障害

  • 記憶障害

  • 失語障害

  • 遂行機能障害

  • 行動・心理症状(BPSD)

 

各症状を詳しく解説します。

 

見当識障害

 

アルツハイマー病の初期段階で出現する症状の一つは見当識障害です(2)。患者は時間や場所に関する認識が曖昧になり、日常生活に支障をきたすようになります。例えば、今日の日付を正確に言えなくなったり、慣れ親しんだ場所でも道に迷ったりするなどです。これは脳の海馬や前頭葉の機能低下によるもので、新しい情報を処理し記憶する能力が損なわれるため起こります。見当識障害は徐々に進行し、患者の自立性と生活の質に大きな影響を与えます。

 

記憶障害

 

アルツハイマー病の記憶障害は、特に近時記憶で顕著に現れます。近時記憶の障害では、数分から数十分前に起こった出来事を忘れてしまい、同じ質問を繰り返したり、同じ話を何度もしたりすることがあります(2)。これは海馬の機能低下によるもので、新しい情報を長期記憶に保存する能力が損なわれるためです。特にエピソード記憶である「いつ」「どこで」「何をしたか」という個人的な経験に関する記憶が障害されやすくなります。

 

日常生活では、物の置き忘れが頻繁に起こったり、約束を忘れたりするなどの症状が見られます。この記憶障害は時間とともに進行し、数字列の復唱などの即時記憶の障害、昔の出来事などに関する長期記憶の障害が出現するのです。

 

失語

 

アルツハイマー病の進行に伴い、失語が見られるようになります。失語では語彙が徐々に減少し、具体的な単語を思い出すことが困難になります(2)。そのため、「あれ」「これ」などの指示語を多用するようになり、会話の内容が曖昧です。また、複雑な文章を理解したり、自分の考えを適切に表現したりすることが難しくなります。これは脳の言語中枢である側頭葉や前頭葉の機能低下によるものです。失語は患者のコミュニケーション能力を著しく低下させ、日常生活や人間関係に大きな影響を与えます。

 

遂行機能障害

 

遂行機能障害は、日常生活に大きな影響を与える症状の一つです。主に、目標を設定し、計画を立て、それを実行に移す一連の過程が困難になります(2)。これは前頭葉の機能低下によるもので、複雑な思考や問題解決能力が損なわれるためです。例えば、料理の手順を順序立てて実行することや、家計の管理、複雑な手順の仕事などが困難になります。

 

また、状況に応じて柔軟に対応することも難しくなり、新しい環境や予期せぬ出来事に適応することが難しいです。この障害は日常生活における自立性を低下させ、あらゆる場面で支障が生じます。

 

行動・心理症状(BPSD)

 

アルツハイマー病の進行に伴い、さまざまな行動・心理症状(BPSD:Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)が出現します。これらの症状には、不安、不眠、うつ、興奮などがあります。特に初期段階では、自身の認知機能の低下に対する不安や焦燥感が強く現れることが多いです(2)。今まで出来ていたことが出来なくなり、将来への不安を感じるようになります。

 

また、混乱や不安から、夜間に徘徊したり、攻撃的な行動をとったりすることもあります。これらの症状は、アルツハイマー病の進行やそれに伴う不安やストレスが原因です。BPSDは患者本人だけでなく、介護者にも大きな負担をかけ、適切な対応と管理が必要です。

 

進行に伴う症状の変化

 

アルツハイマー病は進行することで日常生活への支障が大きくなっていきます。この章では「軽度」「中等度」「重度」の3段階に分けて解説していきます。

 

【軽度】認知機能障害がメイン

 

アルツハイマー病が軽度の段階では、認知機能障害がメインの症状です。日常生活では、最近の出来事を忘れたり、同じ質問を繰り返したりするようになります。

 

この段階では、長年続けてきた習慣的な活動はまだ普段通りにこなすことができますが、新しい情報の処理や記憶が困難です。仕事や家事にも若干の支障が出始め、複雑なタスクの遂行に時間がかかるようになります。しかし、患者自身も周囲の人々も、これらの変化を単なる加齢によるものと見なすことが多く、診断が遅れる原因となることがあります。

 

【中等度】エピソード記憶や長期記憶の低下

 

アルツハイマー病が中等度に進行すると、エピソード記憶や長期記憶の障害が見られます。主に、新しく体験した出来事や数十年前の出来事を思い出すことが困難です。この段階では、食事をしたことを忘れて「まだ食べていない」と主張したり、家族や友人の名前を思い出せなくなったりすることがあります。また、時間の感覚が曖昧になり、季節や年を間違えることも多くなります。日常生活の基本的なタスクはまだ遂行できますが、複雑な作業や判断を要する活動には介助が必要です。

 

【重度】日常生活のほとんどで介助が必要

 

アルツハイマー病が重度になると、患者の日常生活のほぼすべての面で介助が必要になります。言語能力の低下により、コミュニケーションが困難になり、簡単な言葉や文章でさえ理解や表現が困難です。運動機能も徐々に失われ、歩行が不安定になったり、最終的には寝たきりの状態になったりすることもあります。嚥下障害も進行し、食事の際にむせたり、誤嚥性肺炎のリスクが高まったりするでしょう。

 

また、排泄・排尿コントロールが困難になり、失禁が頻繁に起こるようになります。この段階では、24時間体制の介護が必要となり、患者の尊厳を保ちながら、快適さと安全を確保することが大切です。

 

アルツハイマー病の治療

 

アルツハイマー病の治療は「薬物療法」と「非薬物療法」の2つに分けられます。薬物療法では症状の軽減、進行の緩和が目的です。一方、非薬物療法では残存機能を活かし、生活の質を上げることが大切です。

 

薬物療法

 

アルツハイマー病の薬物療法は、症状の軽減と進行の遅延が目的です。主な治療薬として、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬が用いられます(3)。この薬剤は、コリンエステラーゼの働きを阻害し、脳内のアセチルコリン濃度を高めることで認知機能の改善を図ります。

 

また、NMDA受容体拮抗薬の使用も効果的です。この薬剤は神経細胞に異常なタンパク質が蓄積するのを抑制し、記憶や学習能力低下を抑えます。また、症状に応じて、抗精神病薬や抗うつ薬なども併用されることがあります。薬物療法には副作用のリスクもあるため、個々の患者の状態に応じて慎重な選択が必要です。

 

非薬物療法

 

アルツハイマー病の非薬物療法は、生活の質を向上させ、残存機能を活用することが目的です。主にリハビリテーションと心理的アプローチの2つが用いられます。

 

リハビリテーションは、記憶力や注意力、問題解決能力を維持・改善するための訓練を提供します。例えば、実生活環境を想定して実際に家事動作を行うなどです。また、運動療法を実施することで、身体機能の維持だけでなく、認知機能低下を軽減する効果があります(4)。

 

心理的アプローチでは、回想法、音楽療法などが挙げられます。回想法は、過去の経験を思い出し共感することで、意欲の向上、BPSDの軽減などを目指す治療方法です。また、音楽療法は、認知症の症状緩和、患者のストレス軽減、実施方法によっては対人交流を促進することも可能です(4)。さらに、環境調整も大切です。安全で分かりやすい環境を整えることで、混乱や不安を軽減することができます(5)。

 

アルツハイマー病を予防するための食事

 

アルツハイマー病を予防するためには栄養バランスを考えた食事が大切です。アルツハイマー病患者では、抗酸化作用のあるビタミンC、E、βカロテンの欠乏、神経伝達物質の合成に関与するビタミンB群や葉酸の不足、そして赤血球の産生に関わる亜鉛や鉄などのミネラル類の欠乏がみられます(6)。また、脂肪酸の摂取バランスの乱れも指摘されており、これらの栄養学的問題がアルツハイマー病の発症や進行に関与している可能性があります。

 

ビタミンや葉酸の摂取

 

アルツハイマー病の予防において、ビタミンや葉酸の適切な摂取が大切です。特に注目されているのがMINDダイエットです。これは地中海式食とDASH食を組み合わせた食事法です(7)。主に、緑葉野菜、ベリー類、ナッツ類、全粒穀物、魚、豆などを積極的に摂取する内容になっています。

 

これらの食品は、ビタミンE、C、B群、葉酸を豊富に含んでおり、抗酸化作用や神経保護作用があります。特に、緑葉野菜に含まれる葉酸は、ホモシステインの濃度を下げ、認知機能の低下を抑制する効果があります(8)。MINDダイエットを実践することで、これらの栄養素を効率的に摂取し、アルツハイマー病のリスクを抑えられるかもしれません。

 

脂肪酸の摂取バランス改善

 

脂肪酸の摂取バランスを改善することも、アルツハイマー病の予防に効果的です。特に、不飽和脂肪酸を積極的に摂取し、飽和脂肪酸の摂取を控えることが大切です(7)。不飽和脂肪酸は脳の認知機能改善に効果的な栄養素であり、魚油やアマニ油、エゴマ油などに多く含まれています。

 

これらの不飽和脂肪酸は、神経細胞膜の産生や機能維持に役立ちます。一方で、飽和脂肪酸の過剰摂取は炎症を引き起こし、認知機能の低下につながる可能性があるため、動物性脂肪の摂取を控えめにすることが大切です。

 

ミネラル類の摂取

 

ミネラル類の摂取も、アルツハイマー病の予防において大切な役割を果たします。特に亜鉛や鉄などのミネラルは、脳の健康維持に不可欠です。亜鉛は神経伝達や記憶形成に関与し、鉄は酸素運搬や神経伝達に重要な役割を果たします(9)。

 

これらのミネラルは、活性酸素を除去する作用も持っており、神経細胞の酸化を軽減する効果があります(7)。亜鉛は牡蠣やレバー、ナッツ類に多く含まれ、鉄は赤身の肉や緑黄色野菜、豆類などから摂取可能です。バランスの取れた食事を心がけることで、これらのミネラルを適切に摂取し、脳の健康を維持することができます。

 

まとめ

 

アルツハイマー病は、脳内のアミロイドβタンパク質とタウタンパク質の異常蓄積が主な原因です。症状として、見当識障害、記憶障害、失語、遂行機能障害、行動・心理症状(BPSD)などが現れ、進行に伴い日常生活への支障が大きくなります。

 

治療には薬物療法と非薬物療法があり、症状の軽減や進行の緩和、生活の質の向上を目指した治療を行います。予防には栄養バランスの取れた食事が大切で、特にビタミン、葉酸、不飽和脂肪酸、ミネラル類の摂取が効果的です。MINDダイエットのような、緑黄色野菜やベリー類、魚などを積極的に摂取する食事法が注目されており、これらの栄養素を効率的に摂取することでアルツハイマー病のリスクを抑えられる可能性があります。


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