加齢の悩み
今から始めたい認知症の予防方法とは?原因と症状についても解説!
健康スペシャルティ
公開日 1970/01/01
最終更新日 2024/09/12
認知症の予防方法をご存じでしょうか?認知症は加齢とともに発症リスクが上がり、日常生活にも大きな影響を及ぼす疾患です。高齢化社会に伴い、発症率も上がってくると考えられるでしょう。
そこでこの記事では、認知症の原因や症状、予防方法について解説していきます。今から認知症対策を行い、いつまでも元気に生活しましょう。
認知症の原因
認知症は大きく分けて「アルツハイマー型認知症」「血管性認知症」「レビー小体型認知症」「前頭側頭型認知症」があります。それぞれの認知症の原因について解説していきます。
アルツハイマー型認知症
アルツハイマー型認知症は、認知症の中で最も頻度の高い疾患であり、全認知症患者の50〜60%を占めています(1)。この疾患の特徴は、記憶力の低下から始まり、徐々に判断力や言語能力、空間認識能力などの認知機能が衰えていくことです。
アルツハイマー型認知症の正確な発症メカニズムは未だ完全には解明されていませんが、複数の要因が関与していると考えられています。最も有力な説は、脳内にアミロイドβタンパク質とタウタンパク質が異常蓄積することで、神経細胞の機能が阻害されるというものです。これらのタンパク質の蓄積により、脳細胞間の情報伝達が妨げられ、最終的には神経細胞の死滅につながると考えられています。
リスク因子としては、加齢、遺伝的要因、生活習慣、環境因子が複雑に絡み合っています。また、喫煙、過度のアルコール摂取、頭部外傷の既往、慢性的な睡眠不足なども発症リスクを高める可能性があります。
血管性認知症
血管性認知症は、脳血管の障害が原因で発症する認知症です。脳梗塞や脳出血といった脳血管疾患により、脳の特定領域への血流が遮断されることで発症します(2)。この認知症の特徴的な点は、症状が段階的に悪化していくことと、身体症状を伴うことです。例えば、歩行障害や言語障害、麻痺などが認知機能の低下と並行して現れることがあります。
血管性認知症のリスク因子として、高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病が挙げられます。これらの疾患は長期間にわたり脳血管に負担をかけ、最終的に血管の損傷を引き起こす可能性があります。
レビー小体型認知症
レビー小体型認知症は、脳内にα-シヌクレインというタンパク質が異常蓄積して形成されるレビー小体が特徴的な神経変性疾患です。この疾患は、認知機能の顕著な変動、具体的な幻視体験、そしてパーキンソン病に似た運動症状が主な症状です。例えば、患者は昨日まで正常だった記憶力が突然低下したり、存在しない人や動物が見えたりする体験をすることがあります。また、歩行困難や筋肉の硬直といったパーキンソン症状も現れます。
これらの症状は、アルツハイマー型認知症とパーキンソン病の特徴を併せ持ち複雑であるため、正確な診断が困難です。さらに、レム睡眠行動障害や自律神経症状なども特徴的で、患者の生活の質に大きな影響を与えます。治療においては、認知症症状とパーキンソン症状の両方に対応する必要があり、薬物療法と非薬物療法を組み合わせた総合的なアプローチが大切になります。
前頭側頭型認知症
前頭側頭型認知症は、脳の前頭葉や側頭葉が萎縮することで起こる認知症です。この病型の認知症では、性格変化や行動の変化が顕著に現れることが特徴です。例えば、抑制が効かなくなる、共感性が失われる、常に同じ行動を繰り返すなどが見られるなどの症状が現れます。前頭側頭型認知症は比較的若い年齢で発症することが多く、65歳以下で発症する認知症の中では最も多い型とされています。
認知症の初期症状
認知症の初期症状としては、以下の5つが挙げられます。
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言ったことをすぐ忘れる
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時間や場所が分からなくなる
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理解力・判断力が低下する
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身の回りのことが出来なくなる
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行動・心理症状がある
それぞれ解説していきます。
言ったことをすぐ忘れる
言ったことをすぐ忘れるのは、認知症の初期症状として一般的なものの一つです。これは単なる物忘れとは異なり、つい先ほど話したことや体験したことを完全に忘れてしまう状態を指します。例えば、同じ質問を何度も繰り返す、約束したことを全く覚えていない、物を置いた場所を忘れるなどです。
この症状は、特に短期記憶を司る脳領域が障害を受けているために起こり、アルツハイマー病に特徴的です(3)。一方で、昔の記憶である長期記憶は障害されずに残ります。しかし、認知症の症状が進行すると長期記憶も障害される可能性があります。
時間や場所が分からなくなる
時間や場所が分からなくなる症状は、見当識障害と呼ばれます。これは、今がいつなのか、自分がどこにいるのかが分からなくなる状態を指します。例えば、季節感がずれたり、慣れ親しんだ場所で道に迷ったりするなどです。この症状は、脳の時間や空間を認識する機能が低下することで生じます。見当識障害は、認知症の進行に伴って徐々に悪化していく傾向です。最終的には、家族が誰なのかも分からなくなるため、日常生活に大きな影響を及ぼします(1)。
理解力・判断力が低下する
理解力・判断力の低下は、認知症の進行に伴って顕著になる症状です。これは、複雑な情報を処理したり、適切な判断を下したりすることが困難になった状態を指します。例えば、金銭管理が上手くできなくなったり、状況に応じた適切な行動を取れなくなったりします。
この症状は、日常生活や社会生活に大きな影響を及ぼすため、早期発見と適切な支援が大切です。
身の回りのことが出来なくなる
身の回りのことができなくなる症状は、認知症が進行するにつれて現れます。これは、日常生活動作(ADL)の低下として知られています。例えば、料理や掃除、入浴などの基本的な生活動作の困難などです。この症状は、認知機能の低下だけでなく、身体機能の衰えも影響している場合があります。ADLの低下は、本人の生活の質を大きく損なうだけでなく、介護者の負担も増大させるため、適切なケアと支援が必要です。
行動・心理症状がある
行動・心理症状は、認知症に伴って現れる様々な精神症状や行動の変化を指します。これらの症状は、BPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)と呼ばれ、中等度認知症では89.7%の人に症状があります(4)。具体的には、不安、抑うつ、妄想、幻覚、徘徊、攻撃性などです。これらの症状は、認知症患者の生活の質を著しく低下させるだけでなく、介護者にも大きな負担をかけます。
BPSDの管理には、薬物療法と非薬物療法があります。薬物療法では、抗精神病薬や抗てんかん薬が用いられ気持ちを安定させます。非薬物療法では、リハビリテーションや心理療法を実施し、今ある能力の維持や精神の安定を図ります。
認知症の予防方法
認知症の予防方法は「運動習慣」「食事習慣」「サプリメントの摂取」の3つが挙げられます。それぞれの内容について解説していきます。
運動習慣
運動習慣は、認知症予防に効果的であることが多くの研究で示されています。定期的な運動は、脳の血流を改善し、新しい神経細胞の生成を促進します。また、運動は心血管系の健康を維持し、高血圧や糖尿病などの認知症リスク因子を軽減する効果があるのも事実です。
ウォーキングやジョギング、水泳などの有酸素運動を週に3回行うことで、記憶機能の改善が認められています。また、筋力増強とレーニングを週1回以上実施することで、遂行機能などの認知機能に効果がみられています(5)。このように運動による認知機能への効果は多くみられているため、普段から習慣づけて実施することが大切です。
食事習慣
食事習慣も認知症予防において重要な役割を果たします。特に、地中海式食事が注目されています。この食事法は、野菜、果物、全粒穀物、豆類、魚、オリーブオイルを多く摂取し、赤身肉や加工食品の摂取を控えるのが特徴です。
認知症の患者では魚に含まれる不飽和脂肪酸が不足しており、不飽和脂肪酸を含む食品の摂取が予防に効果的とされています(6)。また、抗酸化作用のあるビタミンやポリフェノールの摂取も効果的です。これらの食品に含まれる抗酸化物質や良質な脂肪酸が、脳の健康維持に関与すると考えられています。
また、過度のアルコール摂取や高脂肪・高糖質食品の摂取を控えることも大切です。これらの食事は糖尿病や高脂血症を引き起こすリスクがあります。バランスの取れた食事を心がけ、さまざまな栄養素を摂取することが、認知機能の維持と認知症予防につながります。
サプリメントの摂取
サプリメントの摂取については、認知症予防効果に関してさまざまな研究が行われています。一部のビタミンやミネラル、オメガ3脂肪酸などが認知機能の維持に役立つ可能性が示唆されていますが、サプリメントだけで認知症を予防できるわけではありません。サプリメントに含まれる栄養素は食事から摂取可能であるため。バランスの取れた食事から必要な栄養素を摂取することが望ましいです。
サプリメントの摂取を検討する場合は、必ず医師や専門家に相談し、個人の健康状態や食生活を考慮した上で判断することが大切です。過剰摂取による副作用のリスクもあるため、安易な使用は避けるべきです。
まとめ
認知症は複数の病型が存在し、その中でもアルツハイマー型、血管性、レビー小体型、前頭側頭型が主要です。アルツハイマー型は脳内タンパク質の異常蓄積が原因とされ、血管性は脳血管障害に起因します。レビー小体型はα-シヌクレインの蓄積が特徴で、前頭側頭型は脳の特定部位の萎縮が原因です。
初期症状として、短期記憶の喪失、見当識障害、判断力低下などが現れ、進行すると日常生活動作の困難や行動・心理症状が顕著になります。予防には運動習慣と適切な食事が大切です。週3回の有酸素運動や筋力トレーニングが推奨され、地中海式食事のような野菜、魚、オリーブオイルを中心とした食生活が効果的です。
サプリメントの摂取も考慮されますが、その効果は限定的で、医師に相談のもと慎重に判断しましょう。認知症予防は、これらの方法を総合的に取り入れ、日々の生活習慣を改善することが効果的です。早期発見と適切な対応が、症状の進行を遅らせ、生活の質を維持するために重要となります。