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関節リウマチの症状とは?治療方法や効果的な栄養素についても解説!
健康スペシャルティ
公開日 2024/08/16
最終更新日 2024/10/28
関節リウマチは手指や足趾の関節痛が特徴的な疾患です。それだけではなく発熱や疲労感などの全身症状も現れるため、自覚症状に注意が必要です。
この記事では、関節リウマチの症状や治療方法、関節や骨に効果的な栄養素について解説します。「関節リウマチの症状があるかも」と悩んでいる方はぜひ参考にしてください。
関節リウマチの症状
関節リウマチの症状は「関節痛」と「全身症状」に分けられます。関節痛では、関節のこわばりや変形など特徴的な症状が出現します。一方、全身症状では発熱や疲労感など風邪に似た症状が出現するため鑑別が必要です。
関節痛
関節リウマチにおける関節痛は、特徴的かつ一般的な症状です。手指や足趾の小関節に対称性の痛みや腫れが生じることが多く、これらの症状は徐々に進行していきます(1)。特に朝に強くなる関節のこわばりは、関節リウマチを他の関節疾患と区別する重要な特徴です。
関節痛は免疫異常により滑膜炎が起きることが原因です。時間の経過とともに、この持続的な炎症は関節軟骨や骨まで及び、関節の変形や機能障害につながる可能性があります。また、関節周囲の靭帯が弛緩することで、関節の安定性が失われ、変形や痛みを促進してしまうでしょう。
全身症状
関節リウマチの全身症状は、さまざまな症状が出現します。主な全身症状は、発熱、疲労感、体重減少、貧血などです(2)。これらの症状は、関節リウマチが関節だけの問題ではなく、全身の炎症性疾患であることを示しています。免疫系の異常な活性化により、炎症性サイトカインが過剰に産生され、さまざまな全身症状が引き起こされるのです。
また、眼や口腔に症状が出現する場合もあります。眼にはコラーゲンやプロテオグリカンなどが含まれ、関節の成分と共通しているため影響を受けやすいです。口腔では、顎関節の関節痛・関節破壊により口が開けにくくなります。その結果、口腔衛生を保ちづらくなるため歯周病やドライマウスなどにつながります。
関節リウマチの診断基準
関節リウマチは関節痛以外にもさまざまな症状が現れます。そのため、明確な診断基準はなく、2010年ACR/EULAR関節リウマチ分類基準を用いて治療が必要な人をスクリーニングする方法が用いられます(2)。具体的な分類基準は以下の通りです。
Joint Involvement(腫脹または圧痛のある関節数)0-5点 |
|
中・大関節に1カ所 |
0 |
中・大関節に2~10カ所 |
1 |
小関節に1~3カ所 |
2 |
小関節に4~10カ所 |
3 |
少なくとも1つ以上の小関節を含む11カ所以上 |
5 |
Serology(血清学的因子)0-3点 |
|
RF、抗CCP抗体ともに陰性 |
0 |
RFまたは抗CCP抗体が低値陽性(<正常値3倍) |
2 |
RFまたは抗CCP抗体が高値陽性(≥正常値3倍) |
3 |
Duration of Synovitis(滑膜炎持続期間)0-1点 |
|
6週間未満 |
0 |
6週間以上 |
1 |
Acute Phase Reactants(炎症マーカー)0-1点 |
|
CRP、ESRともに正常 |
0 |
CRP、ESRいずれかが異常 |
1 |
引用:松井 利浩:関節リウマチの診断と治療.図2 2010年 ACR/EULAR関節リウマチ分類基準.
合計が5点以下であれば関節リウマチとは分類されず、6点以上であれば関節リウマチに分類されます。しかし、5点以下でも関節リウマチではないとは言い切れないため、症状を継続的に観察する必要があります。
関節リウマチとの鑑別が必要な疾患
関節リウマチは、他の疾患と似ている症状がみられることも多く、鑑別が必要な疾患が多数存在します。そのため、RA鑑別診断難易度別リストを参考に鑑別する必要があります(2)。
鑑別難易度 |
|
高 |
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中 |
|
低 |
|
引用:松井 利浩:関節リウマチの診断と治療.図2 2010年 ACR/EULAR関節リウマチ分類基準.
上記の表は鑑別難易度別に疾患を分類したものです。これらの疾患を頭に入れつつ、さまざまな症状を鑑別していく必要があります。
関節リウマチでしてはいけないこと
関節リウマチでしてはいけないことは主に3つあります。
-
関節への負荷が高い運動
-
関節を冷やすこと
-
喫煙習慣
それぞれが関節に与える影響を解説します。
関節への負荷が高い運動
適度な運動は必要ですが、関節に過度な負荷をかける運動は避けるべきです。過度な負荷は関節破壊を進行させる可能性があるため、ジョギングやテニスなどのスポーツは控えめにする必要があります。代わりに、水中ウォーキングやヨガなど、関節への負担が少ない運動を選択することが大切です。日常生活においても、重い荷物を持つことや長時間の立ち仕事は関節に負担をかけるため、できるだけ避けましょう。
関節を冷やすこと
関節リウマチ患者にとって、関節を冷やすことも避けたいことです。冷やすことで一時的に痛みが和らぐかもしれませんが、実際には関節の動きを制限してしまう可能性があります。これは冷却により血流が悪くなり、関節周囲の筋肉が緊張してしまうからです。これにより、関節の可動域が狭まり、日常生活に支障をきたす恐れがあります。
代わりに、温めることで血行を促進し、筋肉をリラックスさせることができます。入浴やホットパックの利用は効果的な方法です。ただし、急性期の炎症がある場合は、医師の指示に従い、適切な温度管理を行いましょう。また、寒冷刺激を避けるために、冷たい場所での長時間の作業や、エアコンの風が直接当たるような環境にも注意が必要です。
喫煙習慣
関節リウマチ患者にとって、喫煙は特に避けるべきです。喫煙は関節リウマチの発症リスクを高めるだけでなく、関節リウマチを既に発症している場合、治療効果を減少させる可能性があります(3)。タバコに含まれる有害物質が体内の炎症反応を促進し、免疫系のバランスを崩すことで、関節リウマチの進行を加速させる恐れがあるのです。
また、喫煙は骨密度の低下を引き起こし、骨粗鬆症のリスクを高めることも知られています。これは関節破壊の促進にもつながるため、関節リウマチ患者にとって特に深刻な問題です。禁煙は簡単ではありませんが、関節リウマチ患者にとって大切なことです。
関節リウマチの治療方法
関節リウマチの治療は、患者の生活の質を向上させるために大切です。主に「薬物療法」「非薬物療法」の2つに分けられます。治療の主な目的は関節炎の抑制、骨破壊の抑制、そして疼痛の軽減です。それぞれ解説していきます。
薬物療法
関節リウマチの薬物療法は、段階的なアプローチを取ることが一般的です。段階は主に3つに分けられます。
フェーズ1 |
メトトレキサート(MTX)が第一選択薬です。しかし、肝機能障害や腎機能障害などの合併症がある患者では、使用が制限される場合があります。または効果が不十分な場合は、他の抗リウマチ薬を検討します。 |
フェーズ2 |
生物学的製剤のTNF阻害薬、IL-6阻害薬を使用します。 これらの薬剤は、炎症を引き起こす特定のタンパク質をターゲットにすることで、症状の改善をもたらします。しかし、生物学的製剤は免疫系に影響を与えるため、感染症のリスクが高まる可能性があります。 |
フェーズ3 |
他の生物学的製剤かJAK阻害薬を使用します。これらの薬剤は、前段階の治療で十分な効果が得られなかった患者に対して使用されます。JAK阻害薬は、細胞内のシグナル伝達を阻害することで炎症を抑制します。 |
フェーズ1からスタートし、6ヶ月以内に「臨床的寛解もしくは低疾患活動性」を達成できない場合に次のフェーズに進みます。治療開始後、3ヶ月で改善がなければ治療を見直す必要があります(4)。
リハビリテーション
関節リウマチのリハビリテーションは、生活の質を向上させる上で大切な役割を果たします。主な目的は、関節の保護や身体機能の維持、症状の改善です(5)。リハビリテーションプログラムの中心となるのは運動療法です。関節可動域訓練と筋力増強訓練を行いますが、実施にあたっては負荷に注意が必要です。過度な負荷は逆効果になります。
また、関節リウマチ患者は活動性が低下しやすいため、廃用症候群の予防も必要です。そのため、心肺機能の向上を目指した有酸素運動も積極的に取り入れられます。これにより、全身の健康状態を維持・改善することが可能となります。物理療法も疼痛管理に効果的です。温熱療法や電気刺激療法などを用いて、痛みの緩和や血流の改善を目指します。
日常生活動作を効率的に行うのも大切です。関節に負担をかけない動作を習得することで、日々の生活の中での痛みや疲労を軽減することができます。例えば、重い物を持つ際の正しい姿勢や、家事を行う際の効率的な動作などがあります。
関節リウマチに効果的な栄養素
関節リウマチの管理において、適切な栄養摂取は大切です。特に注目されているのが、不飽和脂肪酸、ビタミンD、カルシウム、そしてビタミンKです。それぞれの栄養素がどのように効果的なのか解説していきます。
不飽和脂肪酸
不飽和脂肪酸、特にn-3系脂肪酸は、体内での炎症物質の産生を抑制し、痛みを軽減する効果があります(6)。また、リウマチ患者に対する効果は、腫脹関節数の減少、こわばりの改善、非ステロイド性消炎鎮痛剤の使用抑制などです(7)。このように魚油やアマニ油などに豊富に含まれる不飽和脂肪酸を積極的に摂取することで、症状の改善につながる可能性があります。
ビタミンDとカルシウム
ビタミンDとカルシウムは、骨の健康維持に不可欠な栄養素です。関節リウマチ患者では、疾患自体や治療薬の影響、さらに活動性の低下により、全身性の骨粗鬆症を合併するリスクがあります(8)。そのため、適切なビタミンDとカルシウムの摂取は、骨密度の維持・向上により、骨折のリスクを軽減します。日光浴によるビタミンD生成や乳製品によるカルシウム摂取などでこれらの栄養素を補うことが大切です。
ビタミンK
ビタミンKも骨の健康に関与します。このビタミンは骨形成を促進し、同時に骨吸収を抑制する作用があり、結果的に骨密度改善に効果的です(9)。また、コラーゲン産生量の増加に伴い、骨質の改善も得られます。骨質は骨の弾力性に影響する要因で、骨質の改善は骨折に対するリスクを低下させます。これらのことから、納豆や緑黄色野菜、海藻類に多く含まれるビタミンKを食事に取り入れることが骨粗鬆症の予防に必要です。
まとめ
関節リウマチは、関節痛と全身症状を特徴とする自己免疫疾患です。関節痛は主に手指や足趾の小関節に現れ、朝のこわばりが特徴的です。全身症状には発熱や疲労感、体重減少などがあり、これらは免疫系の異常な活性化によって引き起こされます。
明確な診断基準はありませんが、スクリーニングに2010年ACR/EULAR関節リウマチ分類基準が用いられ、症状の持続期間や炎症マーカーなどを評価します。治療は薬物療法とリハビリテーションが中心で、メトトレキサートや生物学的製剤などをフェーズ毎に段階的に使用します。また、関節リウマチには適度な運動や関節への負担軽減が大切です。
栄養面では、不飽和脂肪酸やビタミンD、カルシウム、ビタミンKの摂取が関節軟骨の維持や骨粗鬆症の予防に効果的です。日常でできることから始めて、関節リウマチの進行を抑制しましょう。